口座凍結の前に遺族がお金を引き出してもいい？

口座凍結前に、遺族が預金を引き出すことはできます。しかし、注意点があることは知っておきましょう。 ●相続放棄ができなくなる可能性も… まず、相続放棄ができなくなる可能性を知っておきましょう。相続とはもらうイメージが強いかもしれませんが、負債も含まれます。 日本の民法において、相続人が故人の財産を事実上管理・処分したと見なされる行為を「単純承認」と呼びます。 預金を引き出す行為は、故人の財産を管理・処分する行為と見なされます。口座から引き出す行為が単純承認とされる可能性があるということです。 これにより単純承認が成立した場合、相続放棄や限定承認（プラスの財産の範囲内で負債を引き継ぐこと）を選ぶ権利も失ってしまうことがあるのです。 故人の負債も相続人に全て移るということは、住宅ローン、借金、税金の未納分などを負うということです。 もし故人に多額の借金があったら…こう考えると、「少額だけなので口座から引き出そう」という行為も慎重になった方が良いといえますね。 リスクを避けるには、相続の手続きが完了するまで故人の財産には手をつけないということが重要になるかもしれません。 なお、記事の後半で解説する「預貯金の払い戻し制度」も合わせて知っておきましょう。 ●相続手続きの際に思わぬトラブルになることも… さらに考えておきたいのが、遺産相続におけるトラブルです。 本来、個人の遺産はすべての相続人によって協議・分割されます。ところが、預金がひとりの相続人の判断によって無断で引き出されたとすると、他の相続人間で意見が対立することがあります。 これまで仲の良かった家族であっても、お金のトラブルは起こる可能性がゼロではありません。 「病院の精算代だから」「葬儀費用だから」と軽い気持ちで引き出したとしても、結果として使途が不明瞭であったり、最終的な金額が大きくなってしまったりします。 この結果、相続人の間で遺産分割協議がスムーズに進まなくなり、結果としてトラブルに発展してしまうことがあるのです。家族の死亡を機に、家族の関係が悪化するのは避けたいですよね。 続いての章で「預貯金の払い戻し制度」についてご紹介します。 特に「相続手続きが完了する前にどうしてもお金が必要」という場面で知っておきたい制度なので、しっかり押さえておきましょう。