大企業にはマネできない 小さい組織ならではの冴えたランサムウェア対策
先日、SNSを眺めていたら「幼稚園で情報漏えい被害に遭った」という知人の投稿が流れてきました。調べてみると、保育関連サービスを提供するライクキッズでインシデント報告が挙がっていました。 ざっとこの報告を読んだところ、「個人情報合計15万8410件」「マイナンバー情報」という文字が目に入ってきました。あくまでそれらは情報漏えいの“可能性”での数字ですので影響は何とも言えません。ただ、ランサムウェアを原因としてシステム障害が発生し、暗号化されたデータが存在すると考えると、昨今の攻撃を鑑みれば外部に流出した可能性は高いと思われます。 このインシデントそのものは引き続き状況をウォッチしていく必要があります。ただし報告の中で、いい意味で教訓となる、気になる一文がありましたので紹介しましょう。
大企業にはマネできない 冴えたシステム復旧の方法とは?
その一文とは以下の通りです。 ここにあるように、ライクキッズは被害の復旧において、既存のネットワークを使わず、新たに環境を構築したとしています。これは大企業には絶対にマネができないですが、非常に強力な「対策」となり得る方法です。 通常、不正アクセスを許してしまったシステムは、端末をランサムウェアから復旧させたとしても、原因が特定できていなければ再び同じ方法で侵入されるリスクがあります。そのため、復旧は慎重に実施しなければなりません。 ランサムウェア被害に遭った大企業の事例を見ても、ある程度の時間をかけて復旧作業をしていることが分かります。特に先日発生したKADOKAWAの事例では、プライベートクラウドのサーバをシャットダウンしても、攻撃者が遠隔からサーバを再起動するなどの行為が見られたことが話題になりました。原因を取り除くことがいかに難しいかが分かるエピソードです。 しかしそれほど大きくない企業であれば、ネットワークやPCを一気に全部入れ替えてしまうという思い切った対策が可能です。攻撃者は古いネットワークに存在する端末やデータは掌握しているかもしれませんが、突然それが音信不通となり、全く手が出せなくなります。もちろん、インターネットにつながる境界であるブロードバンドルーターが被害を受けた場合、再度侵入を許すかもしれませんが、小さな規模の会社であれば、それすらも入れ替えられるでしょう。 この対策には幾つかのメリットがあります。まず、事業継続はそれなりにスピーディーに実現できるでしょう。小さな企業であればSaaSも活用しているでしょうから、電子メールやメッセージツールはWebブラウザさえ動けばそのまま使えるはずです。 Webブラウザ以外のソフトウェアがほとんどなければ、PC端末を新調するだけで済みます。もちろん問題はPCやネットワーク機器をもう一台買うときのコストと納期です。コストについては、もしかしたらその決断が早ければ、被害全体としてのコストに比べれば微々たるものと捉えられるでしょう(それはつまり、ランサムウェア被害に遭ったときに多大なコストがかかるという意味ですが)。 加えて旧ネットワーク/旧端末はいじることなくオフラインにして保管することとなり、フォレンジックのためにも保全ができることになります。 今回、ライクキッズのレポートでこの対策を実践したと読んだときには、中規模な組織であるにもかかわらずこのような思い切った判断をしたと知り、思わずうなってしまいました。