加速するハリウッドの地盤沈下、エンタメの「首都」空洞化に危機感
昨年には、米国で脚本家や俳優がストライキを実施したことで、製作現場は再び半年にわたる中断に見舞われた。労働者の一部は賃上げや雇用保障の改善を勝ち取ったが、米国で映画やテレビ番組の製作を計画しているスタジオにとっては、新たな労使契約によりコストが上昇。エンタメ大手は、ストを支出削減の好機と捉えた。
映画プロデューサーのジェイソン・ブラム氏は、10月に開催されたブルームバーグ・スクリーンタイム会議で「彼らはパイを小さくしただけだ」と述べている。
こうした影響を最も受けるのがカリフォルニア州だ。映画・テレビ関連業界が70万人以上の雇用と、彼らの収入700億ドル(約10兆9200億円)近くを支えている。ニューヨーク州も同業界の従事者が18万5000人超に上り、180億ドル余りの収入をもたらしている。
足元では、低コストや政府支援を理由に、米国から製作現場が流出する事例が増えている。
コムキャスト傘下ユニバーサル・ピクチャーズの大ヒット映画「ウィキッド ふたりの魔女」は英国で撮影された。ワーナー・ブラザース製作の「ザ・バットマン」も、多くが英国で撮影されている。ロサンゼルスを舞台にした「ブレードランナー」シリーズ最新作「ブレードランナー2099」はチェコ共和国で撮影されている。チェコ映画委員会によると、総費用は推定4300万ドル。これはニューヨークとニュージャージー両州で撮影されたアップルのテレビドラマ「セヴェランス」のわずか2エピソード分の金額だ。
英国では、政府が2007年に映画製作に対する税控除を導入。年間上限なしで、要件を満たした支出の25%をキャッシュリベートとして還付している。チェコでは、2024年末までに登録されたプロジェクトについて、対象経費の最大20%が還付され、25年の製作開始分については最大35%に引き上げられる。
またディズニー、ワーナー・ブラザース、パラマウント・グローバルなどのメディア大手は、世界にアピールする映画やテレビ番組を製作することに関心を強めている。ネットフリックスはコンテンツ向け支出を年間170億ドルで一定させているが、米国で支出の割合を増やしているのはコメディーやスポーツ番組だ。