友人はみんな「ボーナスは年2回」と言っていますが、私の職場には“ボーナス制度”がありません。でも「残業手当が得になる」って本当ですか? 同じ年収でも“差”が出る理由を解説
賞与(ボーナス)の時期になると、周囲で賞与の話題が多くなり、会社に賞与の制度がない人は少々さびしい思いをするかもしれません。しかし年収が同じくらいの場合、賞与のない会社のほうが得になることもあるのです。本記事では賞与制度の概要、年収が同じ場合の賞与の有無による違いなどについて説明します。 ▼会社員で「年収1000万円」以上の割合は? 大企業ほど高年収を目指せる?
賞与の制度はさまざま
賞与の有無や回数は、会社によって異なります。 ◆年2回の会社が多い 多くの会社では年2回、夏と冬に賞与が支払われます。しかし「賞与は年1回のみ」という会社や、賞与が全くない会社もあります。月々の給与と違い、賞与は法律で強制されていないため、各会社が自由に制度を定めているのです。 ◆賞与の額は不明瞭なことも多い 賞与の額を就業規則や雇用契約書に明確に定めている会社もありますが、業績や個人の成績次第で賞与額が増減する会社も少なくありません。 業績や成績に連動する賞与の場合、賞与の額は不明瞭です。こうした制度では、賞与は楽しみであると同時に、支給額が予測しにくいのでリスク要素でもあるといえるでしょう。
賞与なしは「損」?
それでも夏や冬の賞与シーズンになると、賞与のない会社の従業員は「何だか損をしている気がする」と思うかもしれません。しかし年収が同じくらいの場合、賞与がないほうが得をすることも多いのです。ここからは、同じ年収(残業手当を含まない)のAとBについて違いをみていきましょう。 A:年収420万円(月給35万円) B:年収420万円(月給30万円、賞与30万円を年2回) ◆残業などの手当額が違う AとBが同じ時間の残業をした場合、賞与のないAのほうが残業手当は高くなります。なぜなら、割増賃金単価の計算をするときに、年2回の賞与は算入されないからです。 仮にAとBの年間所定労働時間が共に2016時間、かつ「給与が基本給のみ」とすると、賞与のないAの残業単価は2604円、Bの残業単価は2232円になります。この2人が1ヶ月に20時間の残業をしたとすると、Aの残業代のほうが7400円以上も多いのです。 もっとも現実は他の手当もつくため、このような単純な話にはならないでしょうが、同じ年収なら賞与のウエイトが低いほうが残業手当については有利といえるでしょう。 ◆失業給付や傷病手当金も 退職したときに受給できる失業給付も、額の計算に賞与は加味されません。そのため毎月の給与が高いAのほうが、より多くの失業給付を受給できます。 また、けがや病気で働けないときの傷病手当金をはじめ、出産手当金、育児休業・介護休業給付金などについても、額の計算のもとになるのは毎月の給与であり、賞与は算入されません。そのため、年収が同じでも、賞与のあるBより賞与のないAのほうが、高い給付金を受給できることになります。
まとめ
従業員にとって賞与はうれしい制度ですが、年収が同じ場合、賞与のない会社や賞与のウエイトが低い会社のほうが得になることが少なくありません。また賞与の不確定要素を考えると、賞与のない会社の方は、従業員にとってリスクが低いともいえます。 賞与がないことはさびしいかもしれませんが、年収が周囲と同じくらいなら、悪い環境ではないかもしれません。 出典 川崎北労働基準監督署 割増賃金の計算方法 執筆者:橋本典子 特定社会保険労務士・FP1級技能士
ファイナンシャルフィールド編集部