日産と日本旅行が発起人。「サステナビリティは意識が高い人のものじゃない」業界を超えた取り組みの裏側
地域の自然や文化を維持しながら、観光業との両立を図る「サステナブルツーリズム」。 欧米からのインバウンド観光客を中心に注目が高まっているものの、日本人旅行者の間ではまだ浸透していないのが現状だ。 【全画像をみる】日産と日本旅行が発起人。「サステナビリティは意識が高い人のものじゃない」業界を超えた取り組みの裏側 そこで、日産と日本旅行が発起人となり、JRグループをはじめ多業種の全14社が集結した「GREEN JOURNEY推進委員会」を発足。産官学連携のもと新しい旅のスタイル「GREEN JOURNEY」を提案し、第1弾として熊本阿蘇と伊勢志摩へのツアー旅行を販売している。 異業種が同じビジョンのもとコラボするという、業界の垣根を超えた取り組みの裏側に迫った。
「2033年までに1000万人以上」の利用を目指す
「環境にやさしく、地域はうれしく、自分たちはとことん楽しい旅」をコンセプトに掲げるGREEN JOURNEY。 旅先での移動にはCO2排出ゼロのEV(電気自動車)が用意されるほか、地球環境に配慮したサービスを提供する宿泊施設、その土地ならではの食や文化を楽しめるオプションなど、旅行中のさまざまなシーンにサステナブルな要素が散りばめられている。 ポイントは「無理をしない、関わるすべての人が幸せになる」旅だ。 旅行者はこれまでの旅行と同じように非日常を楽しみ、それが結果として環境や地域社会に良い影響を促す。そして旅行者、観光関連事業者、地域の人々の幸せにつながる好循環を生み出していくことを目指している。
EVを旅先での体験ツールとして活用
GREEN JOURNEYの普及に取り組むGREEN JOURNEY推進委員会が発足したのは2024年8月。 2023年末に、発起人となる日産と日本旅行の間で話し合いがスタートした。きっかけは両社が抱える課題にあったという。 「日産は2010年に世界初の量産EV『リーフ』を発売し着実にファンを増やしてきた一方、EV未体験者へのアプローチには悩みもありました。 そこで旅先での“移動”がEV乗車体験の良い機会になるのではと考え、サステナブルツーリズムに注力している日本旅行さんにお声掛けしました」(日産自動車 日本マーケティング本部 菊地 美春さん) 日本旅行では、2019年に大手旅行会社で初めてSDGs宣言を発表し、カーボンオフセットの仕組みを取り入れた旅行商品などを展開。 しかし一般消費者への浸透はなかなか進まず、サステナビリティをより自分ごと化しやすい「体験」を軸とした、新たな商品を検討していた。 「当社では持続可能なまちづくりに取り組んでいたこともあり、ぜひ両社の強みを生かす形で連携できたらと話し、プロジェクトがスタートしました」(日本旅行 事業共創推進本部 近藤れい奈さん)