日産と日本旅行が発起人。「サステナビリティは意識が高い人のものじゃない」業界を超えた取り組みの裏側
サステナブルな旅=環境に良い、だけじゃない
では、会社を超えたGREEN JOURNEYはどのように立ち上がっていったのか。ターニングポイントとなったのは、「現地の視察と地域の人々へのヒアリング」だと2人は口を揃える。 地域の人々が考えるサステナブルツーリズムとはどんなものなのか、地域の課題解決と旅行者の楽しみをどうやったら両立できるのか、そのヒントを求めて熊本県阿蘇市と三重県志摩市で「合宿」を行ったのだ。 「各地域のキーパーソンの紹介で、ホテル、レストラン、土産物店、観光体験施設、農業や漁業に携わる方々と顔を合わせて話をすることができました。 そこで感じたのは地元の発展を切に願う気持ち、そして気候変動など環境変化に対する強い危機感です。 サステナブルツーリズムは、地域の力なくして成り立ちません。地元の皆さんがこれまで築いてきた文化や産業や人のつながりを私たちも一緒に大事に育てていかなければと強く感じました」(近藤さん) 合宿を通じて、プロジェクトメンバーたちはさまざまな気づきを得ることとなった。 「現地に足を運び、現地の方々と対話したことで得られることが非常に多かったです 。 サステナブルツーリズム=単に環境に良い旅のことだと思われがちですが、決してそれだけではありません。 旅行者を受け入れる地域の皆さんが持続可能な働き方や暮らしができるか、環境や文化を大事にしながら経済性を維持できるかといった大きな視点で考えなければ、真のサステナビリティにはつながらない。現地のみなさんとの対話や活動を通じて、そう教えていただきました」(菊地さん)
1社単独ではできないことがある
現地合宿を機に、プロジェクトを通じて実現したいことの解像度が一気に上がったと語るメンバーたち。 一方、「EVを普及させたい」「サステナブルツーリズムを広げたい」という互いの思いをどう受け止め、チームとして歩んできたのだろうか。 「お互いの事業領域についてはもちろん素人です。 日本旅行のメンバーはEVやモビリティに関する勉強を、日産の皆さんは旅行パンフレットの見方や旅行商品の開発プロセスを学ぶというように、事業の中までぐっと踏み込んだ情報交換や勉強を重ねています」(近藤さん) 事業に関するノウハウを外部に共有することには少なからず抵抗があるものだが、一体なぜそこまでやるのだろうか。 「EV普及の裏側にどんな課題があるのか、サステナブルツーリズムを広げるうえでのハードルは何か、互いの手の内や弱みを見せ合わなければ良いものはつくれません。 自社だけではできない部分が明確になれば、互いを補完し合えると考えています」(菊地さん) こうして会社の垣根を超え、理解を深めながら旅のコンセプトを固め、さらなる仲間探しを始めると、JRグループ7社、地球の歩き方、おてつたび、TBWA HAKUHODO、Earth hacks、日本ジオパークネットワークの12社が賛同を表明。仲間の輪は広がった。