なぜ足並みそろわなかった? 「介護福祉士」国家試験改革
猶予が与えられた「養成校ルート」
一方、福祉系養成校(厚生労働大臣指定の福祉系大学や専門学校、職業訓練校などで国は養成施設と呼んでいます)の卒業生に対する改革は、どうしてさらに遅れているのでしょうか。従来、養成校を卒業した場合、試験なしで国家資格を得ることが出来ましたが、こちらも同じ法改正で国家試験合格を義務付けることになりました。 しかし、やはり延期が続き、本年度までは従来どおり、卒業後、無試験で資格を与えることにしました。しかし、来年度から2021(同33)年度までの卒業生については、卒業後5年間、受験資格と暫定国家資格を付与。さらに、5年以内に国家試験に合格する、あるいは原則卒業後5年間継続して実務従事すれば、その後も国家資格を保持できるとした、新制度移行のための“特別措置”を決めました。そして2022年度からは、国家試験合格を義務付ける、としています。
どうしても確保したい若手人材
今回、足並みをそろえた改革が出来なかった最大の理由は、若い人材が介護職を目指さないという厳しい現実です。厚労省のまとめでは、養成校数は、最も多かった2008(同20)年434校でしたが、その年、定員は半数割れとなり、わずか5年後の2012年は378校に減少。奨学金制度を設けるなどの対策はありますが、定員充足率も離職者訓練などを活用した入学者数をのぞくと、54%という深刻な状況が続いています。 試験制度のレベルを上げる改革が必要である一方、国家試験導入というハードルが、さらなる志願者離れにつながる懸念がある。いわば両方の折衷案として取り入れられたのが、来年度から期間限定の特別措置です。 国は、介護福祉士の上級資格として、さらに「認定介護福祉士(仮称)」の導入も検討しています。利用者は質の高い介護を受けることが出来るようになり、介護の現場で働く人は、職の地位を高めることができるという、本来どちらにとっても必要なはずの新制度導入。国は、介護職に占める介護福祉士の割合を当面5割に引き上げるという目標を掲げています。10年がかりの試験改革は、スタート地点についたところです。