頭部には“切断の痕”…ノートルダム大聖堂の地下で発見 数百年前の遺体は一体、誰? フランスで議論に
オリンピックイヤーの締めくくりとなる2024年末、パリではもう1つの大イベントがクリスマスシーズンの華やぎに彩りを添えた。ノートルダム大聖堂の再開である。大規模火災から5年がたち、ついに一般公開が始まったのだが、その裏で議論になっているのが“地下から発掘された謎の遺体”だ。頭蓋骨は半分に切断されていて「一体、誰なのか?」と話題になっている。
■中世のノートルダム大聖堂 実は“カラフル”だった?
「パリ発祥の地」として名高いシテ島。そこに鎮座するノートルダム大聖堂は860年以上前に建設が始まり、歴史は長く、市民にパリの“心臓”と呼ばれている。しかし、2019年に起きた火災では大聖堂の屋根組が焼失し、聖堂の内部も大量の灰とガレキに覆われた。世界中の人々がこの悲劇に心を痛めたが、ある人々にとっては“千載一遇”の機会でもあった。フランス国立の専門機関・INRAPの考古学者たちだ。修復前に緊急で発掘を行うことが許され、彼らは地下から次々に歴史的な発見をした。
大発見の1つは「13世紀初頭の壁の破片」。聖職者しか入ることのできない教会の奥の部分と身廊を仕切っていた壁で、見つかった破片は1000個以上。キリストの彫刻や大聖堂をかたどった柱も、赤や青の色彩をはっきりととどめている。現在の姿からは想像できないが、中世のノートルダムは派手な色に塗装されていたのだ。発掘を主導した考古学者のクリストフ・ベニエ氏によると「破片が13世紀の色彩を保っているのは異例」だという。
破片を展示しているクリュニー中世美術館のダミアン・ベルネ氏は、当時、「聖堂内に入った訪問者が、まず目にするのは、このカラフルな一連の彫刻の壁だった」と、その重要性を強調する。今回の発見により、中世のノートルダム内部を再現できると期待が高まっている。
■頭部を切断された“謎の遺体”
さらに、歴史マニアの想像をかき立ててやまないのが、大聖堂の中心部の地下から見つかった「2つの棺」である。棺は遺体の体形に合わせ鉛で作られた特製のものだった。研究者たちがその1つを切断し、ふたを開けると、中には人骨が…。どのような骨が現れても、研究者たちにとって感慨深いものだったに違いないが、遺体の頭部を見た彼らは、次のような疑問を抱かずにはいられなかった。「なぜ頭蓋骨はきれいに切断されているのだろうか?」と。