吉高由里子『光る君へ』48回を走り抜けて。私のなかの「まひろ」はまだ終わっていません
大河ドラマ『光る君へ』は、1000年以上も読み継がれている『源氏物語』の作者・紫式部の生涯を軸に、生きるとは何か、人生とは何か、人を愛するとは何かを問いかける物語である。主人公の紫式部/まひろを演じた吉高由里子さんは、大石静さんの脚本により、『源氏物語』の世界を旅しているような感覚になったという。平安時代の雅なセット、美しい衣装、格調高い小物などにより、贅沢な体験ができたことにも、吉高さんは感謝している。撮影開始から1年半、ソウルメイトである藤原道長(柄本佑さん)との微妙な感情のやりとり、月を見るシーンが多かった理由、紫式部が『源氏物語』で書いた「もののあはれ」を表現することなど、このドラマに挑んで得たものを、最終回を前にして、吉高さんならではの視点で語ってもらった。 (構成◎しろぼしマーサ) 【写真】周明(松下洸平さん)と再会、嬉しそうなまひろ(吉高由里子さん) * * * * * * * ◆大河ドラマへの挑戦 ━━大河ドラマに挑戦して、どんなことを感じましたか。 大河ドラマをやるのだと思った時は、鳥肌が立つような緊張感がありました。 クランクインした直後の第4回『五節の舞姫』の撮影の時は、スタッフの人数が多く、皆さん結束力が強くて、現場に慣れていて動きのスピードが速い。セットの規模も大きくて圧倒されました。 そして大石静先生の脚本がすごくて、私は毎回、ワクワクしながら台本を読んでました。『源氏物語』の世界を自分が実体験しているような、まるで物語を旅しているような感覚になってましたね。 大石先生は、史実とゼロからの想像の世界を巧みに織り交ぜてドラマを創り上げる。ドラマのテーマを貫くために、時には史実を変えてしまう思い切りの良さもある。 大石先生が脚本を生み出す苦しみは、階段を一段一段と登るようで、大変だろうなと考えていました。大石先生が考えるまひろのイメージに、私がどれだけ近づけたのかな、と思っています。
◆まひろを愛した男達 ━━まひろ/紫式部を愛する男性には、藤原道長(柄本佑さん)、藤原宣孝(佐々木蔵之介さん)、周明(ヂョウミン・松下洸平さん)の3人がいました。3人はまひろにとってどんな存在で、どんな影響を与えたと思いますか。 道長との関係は、説明するまでもなく、ソウルメイトと言われる通りに、お互いが分かり合っている。言葉はいらない関係。 『光る君へ』では、月を見るシーンが多いです。道長とまひろが2人で見たり、お互いに違う場所で見たり。月は2人の関係を表現している。月は雲に隠れても、いつもそこにありますよね。見えていなくてもある。道長が1人で月を見上げれば、まひろを想う。まひろが1人で月を見上げる時は、道長を想っているのです。 まひろの夫の藤原宣孝は、幼少期からのまひろを知っていて、妻も妾(しょう)もいました。史実でもかなり年上で、結婚して間もなく亡くなっています。 全てお見通しでいながら、まひろを自由にさせてくれる寛大な人。まひろが産んだ娘は、自分の子ではないと分かっていたのですが、大きな心で包んでくれる。その豪快さに、まひろは影響を受けました。そして、まひろを面白い人間にさせてくれる魔法の力を持っていました。 周明とは、まひろが父親の藤原為時(岸谷五朗さん)が越前に赴任し、ついて行った時に出会う。周明は宋の見習い医師ですが、貧しさから家族に捨てられた過去がある。まひろも幼い頃に母親が殺され、居場所がない気持ちになった経験がある。お互いにどこか似た部分があることを感じて、惹かれ合う。友情か?恋心か?でも、2人でここではない何処かには行けない。越前編だけで、松下洸平さんの出演が終わるなんて、私は思っていませんでした。(笑) ――第45回で、まひろは大宰府で周明と再会を果たし、時を経て歩み寄ります。ところが、2人は「刀伊の入寇」(異国の海賊が沿岸を襲撃)に巻き込まれ、転んだまひろを助けようとした周明は敵方の矢を受けて命を落としてしまう…。このシーンについてはどんな心境で演じておられましたか? まひろはどん底に突き落とされて、抜け殻のようになります。そして、生きる意味を考える中で「生きていることは悲しいことよ」という心境にまたなったんでしょうね。まさに紫式部の描く「もののあわれ」ですね。周明の影響力は大きかったです。
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