カナダ代表は『メダル確定』の楽観論から準々決勝敗退、戦犯扱いをされるジャマール・マレー「個人的にすごく難しかった」
代表での不振がナゲッツとの契約延長交渉にも影響?
カナダ代表は『死のグループ』を全勝で突破し、決勝トーナメントでアメリカと反対の山に入った時点で、24年ぶりに出場したオリンピックで「あとはメダルの色が金か銀か」という状況にあった。準々決勝の相手は、高さはあってもプレーの強度を出せず、攻守の噛み合っていないフランスだったが、ここであっさりとチームは敗れた。 ノックアウトラウンドに入った途端にチームが機能不全に陥った理由を誰も理解できず、シェイ・ギルジャス・アレクサンダーは「みんな勝ちたい意欲を持っていた。出だしの失速がすべてだと思う。気持ちが入っておらず、積極性を欠き、細部への注意もおろそかだった。なぜこうなってしまったのか分からない」と失望を隠せなかった。 期待が大きかっただけに、失望も大きい。冷静に振り返ってみれば、ロスター12人の総合力が足りず、メインの選手への負荷が大きすぎた。19歳での初招集からチームを牽引し続けてきたキャプテンのケリー・オリニクはここ数年のNBAで力を落としており、代表でもこれまでのような活躍ができなかった。ドワイト・パウエルも控えのケン・バーチも同様で、ベテラン勢が十分な働きができたとは言い難い。 それでも、カナダ国内で戦犯扱いをされているのはジャマール・マレーだ。シェイと並んでオフェンスを引っ張るはずだったマレーは平均6.0得点、3ポイントシュート成功率は14.3%に終わった。ニコラ・ヨキッチとコンビを組むナゲッツでは魔法のようなシュートでオフェンスの中心を担っているが、カナダ代表でその力は発揮できず。ベンチの層が弱い中でセカンドユニットを引っ張り、勝負どころでシェイと2人で得点を奪うのが彼の役割だったが、調子が上がらないままそのどちらの役割も果たせなかった。 『Denver Gazette』の取材に応じたマレーは「ベンチから出て、ボールに触れないままリズムをつかむのは初めての挑戦で、個人的にすごく難しかった。でも、アジャストしなければいけなかった」と語る。 マレーはナゲッツとの契約最終年を迎えており、今夏には契約延長交渉がまとまるものと思われる。最大で4年2億850万ドル(約310億円)の契約となるが、この1年でマレーの評価は微妙なものとなっており、オリンピックでのパフォーマンスはそれをさらにややこしくしている。 マレーには膝の大ケガをした過去があり、その後はコンディション不安を抱えながらのプレーを強いられている。ナゲッツでは21.2得点、6.5アシストと昨シーズンも十分な活躍をしているものの、マレーはコンスタントに活躍するというよりハマった時の爆発力が魅力の選手であり、それは健康であってこそ。2022-23シーズンの優勝の立役者にはなったが、レギュラーシーズンから膝の状態を気にしながらプレーし、勝負のプレーオフでは勝ち進むほどに無理をするようでは、その爆発力に期待しづらい。 すでにニコラ・ヨキッチにスーパーマックス契約を与えているナゲッツは、新しいサラリーキャップのルールに苦しんでいるチームの一つで、マレーにどれだけの条件を提示するかは非常に難しい判断となる。ただ、『外野』の意見がどうであれ、ナゲッツ内部はマレーの実力とこれまでの貢献を高く評価しており、彼のプライドを傷つけない範囲での譲歩を求めることはあっても、契約交渉はスムーズに進むはず。あとはマレーがNBAのコートで自分自身への『懐疑論』を払拭するだけだ。