強豪への歩み/4止 先輩も黄金期に太鼓判 /兵庫
<第91回選抜高校野球> 「このダッシュは本当にしんどいんだ」。昨年11月下旬の明石商。グラウンド脇にある約20段の石段を繰り返し駆け上がる後輩たちを見つめ、OBの松本航(わたる)投手(22)=日体大=は懐かしんだ。 昨秋のドラフト会議で西武に1位指名された松本投手。プロ入りを前に、母校で約3週間の教育実習を受けていた。この日は「部活動指導」の実習で後輩たちの練習を見守った。松本投手は「走攻守全てにレベルが高い」と今年のチームの印象を語った。 ◇ 松本投手が3年生エースだった2014年まで5年連続で、明石商は夏の地方大会で8強に終わった。心が折れかけた狭間善徳監督だったが、甲子園の夢はあきらめなかった。 「パワーとスピードがほしい」。最大の課題は基礎体力だと考え、外部トレーナーをスタッフに招請。効率的な筋トレメニューを日々の練習に取り入れた。 この決断が奏功し、翌15年夏の兵庫大会で準優勝した。これで勢いに乗って同年秋の県大会を初制覇。続く近畿大会でも4強に食い込み、ついに翌16年のセンバツに初出場してみせた。当時、狭間監督は「長く苦しかった」としみじみ語った。 その後の戦績には目を見張るものがある。県大会は17年秋から4季連続で優勝。昨年は悲願の夏の甲子園初出場も果たした。明石商は「黄金期」を迎えている。 ◇ 最速155キロを誇る本格派右腕の松本投手は、後輩たちのあこがれの的だ。同じ本格派右腕の中森俊介投手(1年)は、何より投球フォームが重要だとする先輩の考え方を知って「理想のフォームを丁寧にイメージするようになった」という。 「このグラウンドで勝利への執念を学んだ」という松本投手。すっかり強豪校の貫禄を身につけた後輩たちの姿を頼もしそうに見つめながら「彼らから学ぶ所は多い」と新しい舞台を見据えた。 松本投手でも出場できなかった甲子園に2季連続で乗り込む明石商ナイン。2002年の報徳学園以来、17年ぶりの県勢優勝に挑むセンバツは3月23日に開幕する。=おわり (この連載は黒詰拓也が担当しました) 〔神戸版〕