えっ、人の手で!?「超巨大重機の造り方」先進工場で見た驚愕の光景! 出荷したあとも驚きでした
茨城県の海沿いという立地条件
茨城県北東部に位置するひたちなか市。ここには自動車や各種建設機械の輸出拠点となっている茨城港常陸那珂港区があります。 同港区は、大型コンテナ船やRORO船に対応可能な国際海上コンテナターミナルとして、近年重要性を増していますが、港に隣接する形で立地するのが、日立建機の常陸那珂臨港工場です。 【動画】世界で活躍! 超巨大建機「EX5600-7」動く姿をムービーで見る!! 同社には重量約800tの超大型油圧ショベル「EX8000」や、積載時の総重量が約500tにもなる超大型ダンプトラック「EH5000」などがラインナップされていますが、それらはここ常陸那珂臨港工場で製造されています。 常陸那珂臨港工場は、日立建機のなかでも大型・超大型の油圧ショベルやダンプトラックの本体生産と、物流拠点としての役割を担う拠点工場というべき存在。そのような重要工場の大型・超大型建機の生産ラインを、このたび特別に取材することができました。 日立建機の常陸那珂臨港工場が操業を開始したのは2008(平成20)年のこと。先進性と効率的な生産体制を追求して整備された生産拠点のため、約27万平方メートルある敷地のなかに5つの工場が配置されていますが、これらは一列に並んで建てられています。 工場は、南から第二製缶工場、製缶工場、超大型組立工場、大型ショベル組立工場、大型塗装工場と一直線に並んでいますが、こうすることで製品が一方向に流れるようになるため、生産効率が最適化されるのだそうです。ちなみに工場の全長は約1.6kmあります。
顧客の要望に応えるために
工場の内部を見学させてもらうと、超大型建機の組立を担っているだけあって、そこかしこに巨大な部品が置かれ、鉱山などで使用する超大型の油圧ショベルやダンプトラックが製造されていました。 ただ、ここが自動車工場などと異なるのは、「セル生産方式」を採用している点です。自動車や電化製品などを組み立てる工場では「ライン生産方式」が基本です。この方式は、生産ラインの周囲に作業員が部品とともに配置され、流れ作業で組み立てていきます。それに対し、前出の「セル生産方式」は、一つの行程を別々のグループで作業していて、あとで完成したパーツを組み合わせるというやり方です。 超大型重機は、搭載エンジンなど基幹パーツからして複数のモデルが用意されており、顧客(発注元)の要望に応じられるようにオプション設定は無数にあります。製品の性格上、オーダーメイドのような要素が極めて強いことから、それに対応できるよう「セル生産方式」を採用しているとのことでした。 そのためパーツの溶接などもロボットなどは使わず、ベテラン社員が手作業で行っており、それは超大型のダンプトラックや油圧ショベルなどでも同様でした。 ひと昔前のイメージだと、生産効率を追求した先進的な工場というと、ベルトコンベアの上を組立途中の製品が流れ、その左右にはロボットが配置・多用されて、オートメーション化された生産ラインが複数あるというのが定番でしたが、多品種少量生産の効率化を追い求める場合は、逆に高度な技能を持つベテラン職人の方が、臨機応変、フレキシブルに対応できます。 実際、塗装工場でも、塗料がしっかり付くようにするためのひと手間、製品表面にやすり掛けをする部分では、やはりベテラン社員が専用器具を使って手作業で、一つ一つ丁寧に表面処理を行っていました。 また塗装終了後も、塗り漏れがないか、また塗装表面は丁寧に仕上げられているか人の目でチェックしつつ、足りないと感じた箇所については刷毛で細かく塗り込んでいました。