また出たアナログ!登録解除は「紙」で…「マイナ保険証」最大の問題点はマイナンバーが使えないコト?
「マイナ保険証は医療DXの基盤」(デジタル庁)…なのに解除手続きは「超アナログ」
マイナンバーカードを健康保険証として利用する「マイナ保険証」への一本化が、12月2日から本格的に始まった。今後、「紙の保険証」は新たに発行されなくなる。 【複雑すぎる…】なぜ、こんな「紐づけ」に!? トラブルが起きるのは当たり前! ところが一本化に先立ち、10月下旬からマイナ保険証の利用登録を解除する動きが全国で起きていた。当初、マイナ保険証はいったん登録すると解除できない仕組みになっていたが、国が10月28日から登録解除を可能にしたためだ。「持ち歩くのが不安」「資格確認書がほしい」というのが主な解除理由のようだ。 マイナ保険証の登録解除の手続きができるよう、政府がシステムを改修すると決めたのは’23年8月。だが、厚生労働省がその詳細を保険者である健康保険組合や自治体に通達したのは’24年2月で、それから8ヵ月後の10月9日になってようやく登録解除の運用開始を告げた。 「政府としてはおそらく、利用登録したのにわざわざ解除したがる人はいないだろうと考えていたんでしょう。つまり、最初から想定していなかったわけです」 富士通で住民基本台帳のシステム開発などに携わり、マイナンバーの制度設計も熟知する、行政システム総研顧問・蓼科情報主任研究員の榎並利博さんはそう指摘する。 厚労省のホームページでは、マイナ保険証の利用登録解除について次のように説明している。 ・保険者(健康保険組合や自治体)に申請することで、マイナ保険証の利用登録を解除できる。 ・解除後、有効な保険証がない場合は「資格確認書」の交付を受けられる。 ・具体的な解除手続についての問い合わせは、自身が加入している保険者へ。 国は、利用登録解除の手続きに関しては保険者まかせ。実際、解除方法の説明は自治体によってさまざまだ。 しかも、解除申請には「紙」による手続きが必要。健康保険組合や自治体の窓口に出向くか郵送するなどして、申請書と本人確認ができる公的機関発行の書類を提出しなければならない。「マイナ保険証は医療DXの基盤」(デジタル庁)のはずが、解除申請の手続きは思い切りアナログだ。 ◆「マイナンバーそのものを使えば、トラブルは起こらない」 ちなみに、マイナカードを取得していない人や、マイナカードを取得しているが保険証利用の登録をしていない人には「資格確認書」が交付される。利用登録をしていてもマイナ保険証での受診が困難な高齢者などは、現行の保険証が切れる際に申請することによって資格確認書の交付を受けられる。 「政府は場当たり的な対応をとっている感じがします。そのために、自治体の現場が混乱を極めているのではないでしょうか。システムのことも知らない、現場の運用もわからないような人たちが、法律や制度を勝手に作って進めていることが問題です」 そもそも、マイナ保険証の運用が始まったのは’21年10月。新型コロナのワクチン接種をめぐり日本のデジタル化の遅れが露呈したのもこの頃で、政府はマイナ保険証の利用率アップを足がかりに医療のDX化を加速させるという青写真を描いていたようだ。 だが、本格運用開始から3年経ってもなお、マイナ保険証にまつわるトラブルは後を絶たない。原因はどこにあるのか、医療DXは進んでいるのか。改めて榎並さんに聞いた。