また出たアナログ!登録解除は「紙」で…「マイナ保険証」最大の問題点はマイナンバーが使えないコト?
「マイナンバー制度ではもともと、社会保障と税、災害対策の分野でマイナンバーを使うことを念頭に置いていました。社会保障である医療保険は利用対象ですから、マイナンバーカードを保険証として使うことは、当然ながら最初から想定しています。 ただ、医療分野でのマイナンバーの使い方は中途半端。その理由は、医療保険の『現金給付』と『現物給付』が分けて考えられているからです」 医療保険の「現金給付」とは傷病手当金や高額療養費など支給される現金、「現物給付」は診察や治療、投薬などの医療サービスを指す。 「医療保険の現金給付については、マイナンバーを使うことがマイナンバー法に規定されています。しかし一方の現物給付、つまり診療行為や診療記録、薬歴などの医療記録にはマイナンバーを使うことができません。 実は民主党政権時代のマイナンバー制度設計時に、病気に関しては遺伝疾患などがあると本人以外にもプライバシー侵害の影響が及び、マイナンバー法の範疇を超えるという議論がありました。そこで、医療の現物給付については、マイナンバー法とは別に特別法を制定して対処することになったんです」 だが、その特別法はいまだ手をつけられていない。 「マイナンバー制度を作ったのは民主党政権ですが、その後に政権交代があり、自民党政権がマイナンバー法を成立させました。しかし、マイナンバー特別法を作る話はどこかに飛んでしまった」 どうやら、自民党はもうやる気がないようだ。だから現在も、本来使うべき診療行為や診療記録などの現物給付には、マイナンバーが使えない。 「医療機関や薬局で本人を特定するためには、どうしてもマイナンバーが必要です。でも、医療の現場では使えません。 どうしたかというと、まず、保険者が『マイナンバー』と『被保険者番号』を紐づけするようにした。そのうえで、『被保険者番号』と『資格情報』、新たに『紐付け番号』というものをくっつけた。 さらに、その『紐付け番号』とマイナカードの『電子証明書のシリアル番号』を紐づけすることで本人確認を行い、『資格情報』と『被保険者番号』で管理されている医療記録を医療機関や薬局で引き出せるようにしました。 結局、医療の現場でマイナンバーを使えない状況のままマイナ保険証をスタートさせたから、このような非常に複雑な仕組みになっているわけです」 これまで、マイナ保険証関連のトラブルとして、カードリーダーの不具合や保険証情報の紐づけミスなどがあがっていたが、「マイナンバーという番号そのものを使えば、このような問題は起こらない」と榎並さんは指摘する。 「たとえばカードリーダーの問題ですが、マイナンバーという番号だけを使えば、ICチップの電子証明書を読み取ったり顔認証したりという複雑なシステムも機器も必要ありません。マイナンバーカードの裏面にあるQRコードをスマホでスキャンすれば、簡単にマイナンバーを読み取れます。病院や薬局の窓口でマイナンバーを示して、カードの顔写真で本人確認すれば済む話です」