船底が「赤い」のはなぜか、知ってる? 実は明確な理由があるんです
赤い理由
海を行き交う貨物船や大型タンカーを見たことがある人は、船の底部が赤いことに気づいたことがあるかもしれない。船体の上部は白や青、黒などさまざまな色に塗られているが、船底部分はなぜか赤色で統一されている。いったいなぜか。 【画像】「えぇぇぇ!」 これが大手海運の「年収」です! グラフで見る 船の運航において、輸送コストに直結する船の速度や燃費は重要な要素だ。通常、船舶の性能を向上させるためには船型や主機の開発が行われるが、海上で運航する際には設計とは異なる問題が浮上する。それが、船底に付着するフジツボなどの 「海洋生物」 だ。これらが付着すると摩擦抵抗が増し、船の速度や燃費に悪影響を及ぼす。 古くから、船は海洋生物の付着に悩まされてきた。当時の船は木材が主流で、特にフナクイムシという貝の仲間によって損傷を受けることが多かった。また、海藻や貝類が船底に付着すると、船の速度が落ちたり、燃費が悪化したりするなどの問題も発生していた。 これらの海洋生物に対してはさまざまな対策が施されてきたが、18世紀に初めて銅板が船底に使用されるようになった。銅板にはフジツボなどの貝類が付着しにくいことがわかったのだ。20世紀になると、銅(酸化銅)を使用した船底塗料が登場した。この船底塗料の主成分である酸化銅は赤褐色の粉末であり、これが船底が赤くなる理由だ。
船底塗料の役割
現代の船では、船底に塗られる塗料には主にふたつの目的がある。 ひとつは「腐食防止」だ。船体は主に鉄板で作られていて、長期間海水にさらされると腐食が進んでしまう。特に、塩分を多く含む海水は鉄や鋼などの金属を早く腐食させるため、船体の寿命に悪影響を与える。 もうひとつの目的は「防汚効果」だ。船底に付着する海洋生物や汚れは、船の運航に大きな悪影響を及ぼす。船底は常に海水に漬かっているため、貝類や海藻が付着しやすくなる。これによって、船の水中での表面抵抗が増加し、燃費が悪化したり速度が落ちたりする。こうした問題を防ぐために、防汚塗料が船底に塗られている。 なお、船底に塗装される防汚塗料(Anti-Fouling Paint、AF塗料)は ●加水分解型 この塗料は海水の弱アルカリ性と化学反応を起こし、塗膜の樹脂が溶け出すことで常に滑らかな表面を保つことができる。塗膜表面は防汚性能を長期間発揮するが、海水と反応するため淡水域では効果がない。 ●水和分解型 水になじみやすい樹脂を使用しており、防汚剤が少しずつ溶け出して塗膜表面を更新する。加水分解型に比べると長期使用には向かないが、淡水域でも効果を発揮できる。 ●シリコン型 シリコンゴムを使用しており、その弾性、撥水(はっすい)性、平滑性によって海洋生物が付着しにくくなる。 などの種類に分類される。