早くも蔦重 VS 老中実現! 初回から小気味よい展開に讃辞「べらぼう」な蔦重像に胸アツ【べらぼう】
「ドラマの牽引力になりそう」横浜演じる蔦重の明るさ
そして我らが主人公・蔦屋重三郎だが、実は正確な人となりはそれほど伝わっていない。しかし『べらぼう』では、同時代の作家たちからのわずかな証言と、数多くの人を自分のペースに巻き込まなければ成し遂げられない業績の数々を総合して、非常に人懐っこくて頭の回転も早く、そしてなによりも「自分のためではなく、人のために行動できる」(横浜談)キャラクターに設定された。それに加えて、いかにも江戸っ子らしい明るさとキレのいい悪口のセンスも、視聴者を惹きつけたよう。 SNSでも「主人公、行動力の化身だな」「地雷原に突撃するけど、本人の立ち直りが異常に早くて、落ち込むことなく次の手を繰り出してくるの、素直に凄い」「溌剌としてまるでアニメの主人公みたい。ふつうの時代劇なら浮いてしまう演技かも知れないけど、その明るさがこのドラマの牽引力となりそう」「横浜流星さんの顔の演技がすごい。浮世絵で見る歌舞伎役者みたいな表情する」「声に出したい日本語『鼻から屁の出る病になりゃいいんだ』」などの高い評価が集まった。 ■ スキがない物語の展開! 小気味の良い初回となった『べらぼう』 さっそく「吉原を良くするには、ほかの色街を取り締まってもらえばいい!」と行動に出た蔦重。そんなまだまだ無知&世間知らずな彼に「岡場所や宿屋を野放しにしているのは経済を回すため」「吉原に人が来ないのは上層部の搾取と怠惰」とド正論を突きつけたのは、この時代のもう一人の主役と言える田沼意次その人! 第一話からトップのボスキャラに世間の真理を教えてもらうという、すでにクライマックスな展開に、SNSの興奮は最高潮に。 「渡辺謙の『話が通じる偉い人』像としての説得力」「小悪に目をつむり大善を為す・・・! それが田沼の政」「重三郎の言葉を茶化したり、暴力で断ち切ることしかしない女郎屋の主人連中と違い、理由を説明して言葉でやりこめた」「放送第一回から賄賂を受け取る黒さと、マクロな視点で国益を考え主人公にこの先の道を指し示す超有能ご老中様の風格がすごい」などの感嘆するような言葉が続々と。 その結果重三郎は、細見になんらかの工夫を凝らすことで、吉原に人を呼び戻すというアイデアを、お仕置きとして閉じ込められた桶の中で思いつく。当時の細見は、ただお店の名前&所属する遊女の名前が記してあるだけの、味気のないものだったという。そこに重三郎が、どのような要素を+αしていくのかは、来週で詳しく語られるだろう。 それにしてもこの策を思いついたのが、意次からのアドバイスに加えて、吉原の客の動向を桶の中で観察できたから・・・というのは、本当に物語の展開にスキがない。さらに、創意工夫されたキャラクター作り&そのキャラに俳優たちがビシッとハマっていく姿を確認できる、非常に小気味の良い初回となった。このスッキリさわやかさに、吉原&幕府政治の闇というビターテイストが、複雑な味わいを与えてくれるであろう『べらぼう』。今年の大河も、1年間の並走が実に楽しみだ。 ◇ 大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。1月12日放送の第2回「吉原細見『嗚呼(ああ)御江戸』」では、ガイド本で客を呼び寄せる案を思いついた重三郎が、序文の執筆を依頼するために、才人・平賀源内探しに奔走する姿を描く。 文/吉永美和子