【LiLiCoのこの映画、埋もらさせちゃダメ!】エリザベス・モスのお芝居を目当てに観たんですが、ハマる心理サスペンスでした 『Shirley シャーリイ』
自分の人生を生きることができないと思っている方は考えさせられると思います
もう1作品は日本映画。橋口亮輔監督の9年ぶりの長編映画『お母さんが一緒』です。これは元々CSホームドラマチャンネルで制作されたドラマシリーズがあって、それを劇場用に再編集したバージョンになります。 母親の親孝行のために温泉旅行を計画した三姉妹、長女・弥生、次女・愛美、そして三女の清美。弥生はルックスで評判だった妹たちに嫉妬心を抱いていて、愛美は弥生が優等生だったことで比べられていたことにコンプレックス。清美はそんな姉たちを見て育ちました。 3人の共通の思いは、「母親のような人生を送りたくない」というもの。とはいえ、親孝行のための旅行だからそこを抑えて……と思っていたところ、あるきっかけで愚痴が炸裂。お互いを罵り合う修羅場になってしまいます。そんなときに、サプライズで清美が呼んだボーイフレンドが現れ……。ものすごいテンポの良いホームドラマです。 私、愛美役の内田慈さんに注目をしていて。大塚千弘さんとのダブル主演作だった『レディ・トゥ・レディ』から気になっている俳優です。彼女って身近にいそうな人の役を見事に演じるんですよね。その点で、愛美はハマり役。心の内に秘めたコンプレックスをおさえつけ、普通に振る舞おうとする芝居は最高です。 それだけでなく、この三姉妹のキャスティングは素晴らしい。弥生役の江口のりこさん、清美役の古川琴音さん、そして内田さんの三つ巴は、そうそう見ることができないタッグ。なにせ全員芝居が達者なんですから。三姉妹のバックグラウンドがそれとなく見えるような脚本を、見事に芝居の力で表現しているんです。 それに、このストーリーも見事。お母さんの言うことを聞こうとして人生を犠牲にしてしまったと思っている子のあり方。これ、ものすごい日本人っぽいんですよね。結婚して孫の顔を親に見せるのが子の務め、のような考え方を持っている人がいることは理解できますが、そこに縛られる必要はないですよね。私は自分が自分らしく生きることこそが人生だし、親の期待に応えることが人生の全てというのは違うかな、と思っています。 この作品の中では、壮絶な姉妹ケンカが始まってからその問題について考えさせられますが、そこで共感するか、私と同じように「もっとラクに生きればいいのに」と思うか。そこで考え方の差が見えると思いますよ。面白い展開だったのは、清美のボーイフレンドが現れてから。彼女、一番のちゃっかり者ですよ(笑)。 家族やきょうだいって愛おしいものではあるけど、ときに厄介。いずれにしても、自分の人生を生きることの大切さ、それができないと思っている方は何が邪魔をしているのか、考えさせられると思います。 (C)2018 LAMF Shirley Inc. All Rights Reserved (C)2024松竹ブロードキャスティング 取材・文:よしひろまさみち 撮影:源賀津己 『Shirley シャーリイ』 上映中 『お母さんが一緒』 上映中 ■LiLiCoプロフィール 1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。