あなたの味方だよ――苦しむ若い女性が駆け込める「まちなか保健室」の回復力 #今つらいあなたへ
高校卒業後の居場所に
オープンは2020年7月。代表で弁護士の大谷恭子さんが、まちなか保健室と命名した。「高校までは学校の保健室に支えられていたような子が、20歳前後になって居場所がなくなった時に来てもらえたら」と考えてのことだったという。その狙いどおり、昨年度の保健室の来室者は18歳以上20歳未満が最多(444人)で、20歳以上25歳未満(439人)と合わせると、全体(1259人)の7割を20歳前後が占める。 ただ、当初想定していなかったことも見えてきたと大谷さんは語る。 「オープン前は、少し休めばまた頑張れるような子が来るかなと想定していましたが、実際は重い事情を抱えた子たちがやってきました。親の支配などで、真綿で首を絞められているかのような苦しい家族関係をもつ子が多かったのです。身体的虐待や性的虐待のような緊急性が高く公的機関に保護されてきた子と違ってキャッチされにくいのですが、実は希死念慮を持っている。こういう子たちが自死の数を上げているのかなと危惧しています」 まちなか保健室への昨年度の相談(メール含む)の主な訴えは、虐待(605件)、希死念慮(424件)、性暴力(297件)と続く。虐待は、体への暴力だけでなく、親の支配に服従させられるといった心理的虐待が目立つという。
オーバードーズの女性
保健室をよく利用する茉優さん(仮名、21)も、虐待に苦しんできた一人だ。幼い頃から父親に暴力を振るわれ続け、外での対人関係にも影響が出るようになった。 「男性が横を通るだけでもビクッとする。特に若い男性だと体が固まってしまうんです」(茉優さん) 中学高校ではつらいとき保健室に駆け込むことで乗り切ったが、高校卒業後は安心できる居場所がなくなった。親から逃れたくとも、下のきょうだいを守るために家からはまだ離れられない。精神的に追い詰められ、市販薬を買い込んでは、過剰摂取(オーバードーズ)することで苦しみを紛らわしていた。 そんな約2年前に、家族関係が不安定で支援団体に詳しい友人が紹介してくれたのが、オープン間もないまちなか保健室だった。