ワリエワの転倒連続4位にリピンスキー氏ら元五輪金メダリスト達が周囲の責任を追求する声…「彼女を五輪に出した大人を非難すべき」
英BBCは「ワリエワが数回、転倒して4位に終わり、議論を呼んだ冬季五輪は涙を浮かべて終わった」と伝えた。 記事は「薬物検査で引っかかりCASの裁定で北京での競技を許されたワリエワは、スポットライトの中で得点を待つ間、むせび泣いた」と紹介。 「競技を見た人々は、そもそも彼女が滑ることを許され、CASが“出場できなければ計り知れないダメージを受ける”とした見解に疑念を抱いていた。多くの人々が、(ワリエワの4位陥落は)出場が許されたことで起きたのではないかと語るだろう」と、CASの裁定を改めて疑問視した。この結果を受けてフィギュア界からも様々な問題提起がなされた。 1998年の長野五輪女子シングル金メダリストのタラ・リピンスキー氏もNBCの中継の中で「(ワリエワの4位の結果を見た自分が今)何を感じているのか、何を考えているのかも分かりません。ただワリエワが痛みを感じているところを目にしています。彼女は15歳です。彼女をこの状況に置くことにした周囲の大人たちを非難します。そして、他のすべてのアスリートたちも、幼少の頃から夢に見た五輪のメダル表彰式、表彰台が、もしかすればないかもしれないという辛い思いをしました」と語り、出場を認めたCASや、そもそも出場を求めたワリエワ陣営を批判した。 リピンスキー氏はCASの裁定が出た際にもツイッターにて「決定に強く反対します。結局のところ陽性反応があり、彼女が試合に出場することは許されるべきではない。年齢や検査/結果のタイミングに関係なく」と反発していた。 ドイツのテレビ局ドイチェ・ヴェレは「ドーピング問題についての論争が続いているにもかかわらず、北京の観客とフィギュア界からは、この10代選手(のワリエワ)に同情の声が出ている」と報じて、1984年のサラエボ五輪、1988年のカルガリー五輪の女子シングルで連覇を果たした旧東ドイツの“レジェンド”カタリナ・ヴィット氏のコメントを紹介した。 「起こるべきでなかったことが明確に起きてしまった。彼女は、政治的プレッシャーにさらされた15歳の子供です。世界中の注目を浴び、普段の彼女の姿とは程遠い状態になってしまいました。彼女のチーム、両親、責任を担う関係者が、彼女を飛行機に乗せ、あの場所(北京五輪)から離れさせるべきでした。彼女への対応は、とても無責任です。彼女は15歳に過ぎないのに、敗者という結果だけが残ってしまった」 さらにヴィット氏は「フィギュア界は年齢制限の導入を考えるべきでしょう。ワリエワは才能とオーラがあり、懸命に練習してきました。彼女に今起きていることを何とか克服して戻ってくることを願っていますが、次に出てくる14歳(の選手)が、彼女の座を奪おうと待ち構えていることが心配です」とも話し、15歳以上とされている五輪の年齢制限をさらに引き上げることを提案した。 また1980年のレークプラシッド五輪の男子シングル金メダリストでBBCの解説を務めるロビン・カズンズ氏も「違った理由からちょっと言葉が出ない。今回、彼女を(五輪に出場させず)家族のいる家に帰して、この先、まだ2度出場機会のある五輪を目指して、問題の収束を待つより、(北京で)競技させた方が良いと考える関係者がいた。ワリエワの才能と素質を考えると、このアリーナで、あのような形の滑りを見るようなことを決して起こすべきではなかった」と、出場を強行した周囲の関係者を批判した。 ワリエワのドーピング違反の背景はもとより、そういう問題が発覚したにもかかわらず北京五輪出場を強行した周囲の関係者や、出場を認める裁定を下したCASの責任問題も今後は追及する必要があるだろう。