菅田将暉「この映画が自分にとって“やらなければいけない”作品である理由」
すごいエネルギーとスピードで読み終えてしまえる台本だった
── 『Cloud クラウド』の脚本を読んで「めちゃめちゃ面白い」と感じた理由を、改めて伺えますか? 菅田 そもそもこの“サスペンス・スリラー”というジャンルが好みというのもありますが、余計なト書きがなく、人物の動きとセリフだけが羅列していて、すごいエネルギーとスピードで読み終えてしまえる台本だったんです。 台本を読む時は大抵、自分の役をイメージしながら「ここでこういう気持ちなのかな」とか考えながら読むので時間もかかるんです。でも今回はそうじゃなく、読み物としてスパッと読んでしまった感じが新感覚で。ということは、すごく面白いんだな! と思いました。 ── それは演じる立場の俳優さんからすると、難しい台本だったりはしないのですか? ただでさえ(主役の)吉井は、何を考えているのかわからないところがありますし。 菅田 疑問を持とうとすればいろいろあるんですけど、現場に行ったらわかることもあるし、吉井の生きざまとして嘘がなく感じられたので、気になりませんでした。例えば、吉井がなぜこんな恐怖にさらされることになったかについても、経緯を見てるとなんとなくわかりますよね。 ── 確かに。吉井という人間については、すんなり理解することができましたか? 菅田 理解とまではいかないかもしれないですけど、イメージはできました。ただ、吉井を演じるにあたり、幼少期はこんな家庭で育ち、こういう性格で……という背景なりストーリーを考えたうえでお芝居したほうがいいのか、そういうのもまったくなしがいいのか、黒沢監督はどっちなんだろう? というのは当初迷いました。 たぶんいらないんだろうなとは思いながらも、ご本人に訊くのは野暮な感じがしてならなくて。それで、監督が作品において何を大事にし、何を面白がるのかのキーワードをもらえたらなと思い、撮影前に一度、二人で話す時間をいただいたんです。 そこで何か1本、映画をテーマに話せればなと思って、「今回の作品に関わるものでも、そうでなくてもいいので、監督の好きな映画をインスピレーションで1本挙げてくださったら、僕、観ていきます」と言ったら、アラン・ドロン主演の『太陽がいっぱい』を挙げてくださったんです。 それを見た時に、役のことだけでなく黒沢監督とのやり取りも含めて、「こういう感じでやっていけばいいのか」と察しました。