「自覚症状が出たらほぼステージ4」膵臓がんはなぜ「こんなに怖い」のか…スペシャリストに聞く「一刻も早く見つけるために最適な検査方法」
どこで診てもらうか、誰に診てもらうかで、文字通り運命が決まる。知っている人だけが幸せになれる、優れた医療の「条件」とはなにか―一流の医師たちが明かした。 【一覧】名医20人が自分で買って飲んでいる「市販薬」実名リストを公開! 特集『最高の病院 危ない病院』第1回『歴代首相の「かかりつけ医」が本誌だけに語った…!「ほんとうにいい医者」の条件と、大人なら半年に1度は検査すべき「ヤバい病気」の名前』よりつづく。
見えない臓器
「膵臓が非常にやっかいなのは、『見えない臓器』だからです。胃や大腸のように内視鏡で直接検査できず、がんが大きくなっても出血や下血などの症状がない。『五臓六腑』という言葉にも入っていない内臓なのです」 こう語るのは、東京医科大学病院で消化器内科診療科長・主任教授を務める糸井隆夫氏だ。膵臓がんや胆道がんの検査・治療のスペシャリストとして知られる。 膵臓がんの罹患者は急増の一途をたどっている。四半世紀前、2000年には年間約2万人だったのが、2020年には4万人を超えて倍増。今年の5月には、漫才師の今くるよさんがおよそ2年の闘病の末に亡くなった。 見つけることも治すことも難しい膵臓がんは、とにもかくにも「早期発見」が明暗を分ける。だが、膵臓そのものが厚さ2cmほどの細長い臓器のため、検査で見落とされるケースが少なくないのも実情だ。 あらゆるがんの中で最も診断が難しいとされる膵臓がんを、一刻も早く見つけ出し、進行を未然に防ぐには、どうすればいいのだろうか。 「まず、その人が膵臓がんのリスクが高い患者さんかどうかを判断します。 膵臓がんは他のがんに比べて、なぜできるのか、どのように進行するのかがよく分かっていません。ただし『糖尿病』『膵嚢胞』『慢性膵炎』がみられる人のリスクが高いことは判明していますから、これらの症状がある場合は、半年から1年に1回は、画像診断を受けたほうがいいでしょう」
自覚症状が出たときには…
膵臓は「膵管」とよばれる管で十二指腸とつながっており、消化液である膵液を出したり、血液中に血糖値をコントロールするホルモンであるインスリンを出したりしている。そのため、高カロリー・高脂質の食べ物やアルコールをとると、急激に負担がかかってしまう。一般的に、毎日60gのアルコールを飲み続けると慢性膵炎のリスクが急増すると言われる。 腹痛や食欲不振、黄疸(皮膚や白目が黄色みがかる)などの自覚症状が出たときには、すでにステージ4に達していることが多いのが、膵臓がんの恐ろしいところだ。 「膵臓は前のほうから膵頭部、膵体部、膵尾部と言いますが、膵頭部にがんができると胆管が圧迫されて狭くなり、胆汁の流れが悪くなって黄疸が出るようになります。 また、膵臓の後部にがんができると、すぐ近くに肝臓につながる『脾静脈』という血管が通っているため、がん細胞が肝臓に転移しやすい。膵尾部のがんの場合は、患部がかなり大きくなって神経を圧迫するようにならないと、痛みなどの自覚症状もありません」
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