アメリカンフットボール・九州学生1部、九州大のリーグ連覇なるか…攻撃面で相手に「刺さる」工夫凝らす
アメリカンフットボール・九州学生1部リーグが佳境を迎えている。学生アメフトの日本一を争う全日本大学選手権出場をかけた6大学の争いは、4日の第5節3試合を残すのみ。唯一の4戦全勝で首位を走る九州大が、リーグ連覇に近づいている。(緒方裕明) 【表】九州学生1部リーグの順位
10月21日、日が傾きかけた福岡市西区の九州大伊都キャンパス内にあるグラウンドに、授業を終えた部員が集まり始めた。攻撃、守備ともに多様な作戦を立て、実行が求められるアメフトは、準備の綿密さがものをいう。マネジャーが映像を撮り、ポジションごとの動きを細かく確かめていた。
同大アメフト部は1976年に愛好会として発足した。選手、スタッフ合わせ部員は53人。高校までのアメフト経験者の入部はほとんどないが、昨季までに16度の九州制覇を誇る。
伝統の粘り強い守備に加え、今季は攻撃にも工夫を凝らす。司令塔を務めるクオーターバック(QB)高木秀都選手(4年)は「対戦するチームに合わせ、確実に『刺さる』作戦を準備してきた」と言う。相手の守備の穴を分析し、国内の他大学や米国の大学、プロリーグの試合映像も参考にしたプレーを取り入れた。
さらに、戦術理解の向上にも努めた。ランやパスにかかわる選手だけでなく、攻撃に参加する全員が、試合や練習後のミーティングで意見を出し合った。「この1年間でアメフトIQは確実に上がった」と、自信をのぞかせる高木選手。この先の戦いでも、多彩な手札が繰り出されそうだ。
堅い守りの指揮を執るのは、ラインバッカー(LB)岩本龍之介選手(3年)だ。緻密な読みと、素早い反応で相手のランやパスの受け手をつぶす。前年王者として臨んだ今季は「明らかに相手に対策を打たれていた」と、苦しい場面もあったが、試合中に修正してしのいだ。互いに3戦全勝で迎えた10月19日の西南学院大戦でも、何度もゴールライン際に押し込まれながらも粘り、接戦を制した。
昨年の全日本大学選手権は、準決勝で関西学院大と対戦し、0―49の完敗。岩本選手は「試合中は何をされているのか分からなかった」と打ちのめされた。圧倒的な実力差を見せつけられ、「難しい目標を立てるのではなく、長いスパンで地力をつける必要がある」と高木選手。チームは足元から鍛え直し、ライバルにマークされながらも勝利を重ねた。