ラスベガスで年間最優秀KO賞の劇的勝利! 喜びを爆発させる中谷潤人に師匠ルディ・エルナンデスは静かに諭した
1992年11月、ヘナロは東京体育館で10戦10勝10KOという戦績で国内屈指の人気ボクサーだった渡辺雄二の挑戦を受け、圧倒的な実力差を見せつけて6ラウンドKO勝利を飾った。試合後、悔し涙を流す渡辺に優しい言葉をかけて労い、勝利者インタビューでも試合をしてくれたことへの感謝と、渡辺の将来に対する期待のコメントに終始した。 生涯通じて敗れた試合は、ライトに階級を上げ2階級制覇を目指して挑んだ、のちに史上初の6階級世界王者になる「ゴールデン・ボーイ」オスカー・デ・ラ・ホーヤ戦(95年9月)と、史上最速で5階級制覇を達成することになるフロイド・メイウェザー・ジュニア戦(98年10月)のみだった。 マネージャーとして兄、潤人と共にロス合宿に参加する弟、龍人はこう話す。 「ルディは自分の現役時代については語ろうとはしません。でもヘナロさんについてはいろいろ話してくれます。『自分とは違ってものすごく真面目で、どんなことがあっても毎朝必ず早く起きてロードワークをしていた』とか。 ルディは年齢的なこともあって、『俺もそう長くコーチはできないかもしれない』という気持ちがあるらしくて、兄(潤人)のコーチができなくなった後のこともすごく考えてくれていて、『今のうちに伝えられることはすべて伝える。でもいずれお前がコーチとして潤人をしっかり支えていかなければいけない』とよく言われます。指導は厳しいですが、兄弟そろって大切なことをたくさん学ばせてもらっています」 龍人もルディも陽気で食べることが大好き。他人の気持ちを思いやれる龍人のことをルディはいたく気に入りすぐにファミリーになった。今はマネージャーとしてコミュニケーションを取る時間は潤人よりも長く、ルディは龍人を「ビッグボス」というニックネームで呼んでいる。選手とマネージャー、兄とは立場は異なるが、龍人にとってもルディはボクシングの師、人生の師なのだ。 そんなルディ最愛の弟、ヘナロは、発症率が極めて低いとされる癌の一種、横紋筋肉腫という難病に侵され45歳という若さで亡くなった。