いじめられていた僕が伝えたいこと…涙活仕掛け人、寺井さん実体験を絵本に
「お母さんはあなたの味方」 ── 必ずだれか愛してくれている
泣けないほど追い詰められ、心を閉ざしていた寺井さんには大切な忘れられない思い出があります。 「お母さんはあなたの味方よ」。 自分は生きている意味があるんだろうか……。修学旅行先で、そんなことを考えながら、開いた弁当箱には母親からのメッセージが添えられていました。 「大好きな家族に心配かけたくなくって、いじめられていたことは言えなかった。でもちゃんと親はわかっていたんですね。私は幸運なことに親に恵まれていました。不思議ですね。つらくても泣かなかったのに、あったかくされて、思わず涙が出ちゃいました」。 ようやく自分の体験を話せるまでになった、という寺井さん。だからこそ、自分の存在意義を否定するような考えに凝り固まってしまっている思春期の子どもたちに「必ず地球上のだれかが愛してくれている、って伝えたい」と語ります。
「好きな人同士」 先生の言葉が“ひとり”を再認識させる
「学校の先生の意識も変えなきゃと思っている」と、寺井さんはいいます。 「いじめられる方にも原因があると思っているのか、先生は助けてくれなかったですね。見て見ぬふり」。 2013年施行のいじめ防止対策推進法は、いじめの早期発見や対応など、学校の責務を明確化しました。しかし昨年、文科省が発表したいじめの認知件数は過去最高で、いじめが原因と見られる自殺は一向になくなりません。 寺井さんは「学校の生活は閉ざされていて、子ども達にとっては世界の全て。逃げ場がない」と訴えます。 「グループをつくるときに『好きな人同士で組んで』と先生が指示しますよね。ひとりでも別にいいや、と思っている子もいるかもしれないのに、その言葉でひとりでいることを再確認させられるんです。友達はいなきゃいけない、自分はひとりだ、と再確認させられる」。 無料通話アプリのLINEや会員制交流サイトSNSという新たなツールが普及したことも、子どもたちの関係をより複雑にしていないか、心休まる時間がなくなる原因になってはいないか、気にかけます。 「今の子どもたちは、SNSの擬似友達、薄い友達関係に慣れてしまい、そんなことはたいしたことではないのに、グループから外されたり、悪口書かれたり、いつ仲間はずれにされるか気が抜けないのでは。これでは、せっかく学校から離れて家にいても、見なくていいものまで見えてしまう」。 周囲の大人が、ますますいじめの実態を見つけにくくなっている可能性がある。だから自ら「親でも、信頼できるのなら、近所のおじさんだっていい。必ずだれかに助けを求めてほしいですね」と強く願います。