京都在住の花房観音さんと一緒にたどる、京の旧跡が伝える9つの人間ドラマ。
人間の色、欲について悩み抜いた親鸞はこれを機に妻をめとったそうです。私は大学で親鸞学を学びましたが、これを聞いていっそうの親しみを感じました。親鸞の真面目さに打たれたんだと思います。
中国は唐の時代。玄宗皇帝が愛した楊貴妃は絶世の美人としてつとに有名です。皇帝が彼女に夢中になるあまり、国は乱れてしまい、そのことを理由に彼女に自殺を命じます。
楊貴妃を失った皇帝は「長恨歌(ちょうごんか)」という歌で自らの悲しみを訴えますが、彼女を殺したのはほかの誰でもない、玄宗皇帝。そんな楊貴妃の観音像がなぜここにあるのか? その詳しいことはわかっていません。泉涌寺は江戸以降の天皇の墓が多くあるお寺。静かで広く、独特の雰囲気があります。
高瀬川が流れる旧五条楽園の入り口には源融(みなもとのとおる)のお屋敷跡があります。
跡といっても石碑と大きな榎が立っているだけですが、源融は源氏物語の光源氏のモデルともいわれていますね。そして、旧五条楽園は何が楽園なのかといえば、この一画は2011年まで色街だったのです。働いている女の子が友だちで昔案内をしてもらったのですが、それは風情のあるお部屋でした。
時間もお線香一本で計ったりして。源氏物語は男の欲望を描いたお話ですが、旧五条楽園の名前にその名残を感じます。
昔、遠藤盛遠(えんどうもりとお)という武士がいて、源渡(みなもとのわたる)の妻・袈裟御前(けさごぜん)に懸想をしました。俺の女にならねばお前の母を殺す。盛遠がそう脅すと、袈裟は「夫を殺してくれたら、あなたのものになる」と答えた。
約束どおりに、夜に屋敷に忍び込み、寝ている夫の首を切る。が、手にした首を月夜に晒してみれば、それは袈裟御前のものでした……。
以来、盛遠は出家して文覚上人となりました。戀塚寺には袈裟の供養塔がありますが、なぜか文覚上人(もんがくしょうにん)の墓のある方向を向いています。