〈食べログ3.5以下のうまい店〉ひと口食べるとハッと驚く、潔いコーンスープ。日本料理のエッセンスを感じるフレンチ
店名「La mère」に込められた思いと象徴する食材
店名の「La mère」とは、フランス語で「お母さん」の意味。母親が家族の健康を気遣って料理するように、安心・安全を第一に食事を楽しんで欲しいという想いが込められている。料理は黒田浩二氏が、ドリンクはマダムの黒田さおり氏が担当し、夫婦二人三脚でゲストをもてなす。
料理人になった理由を尋ねると黒田シェフはこう語った。「将来を考え始めた高校1年生の時、たまたまパティシエのドラマを観てこれだ!と思ったんです。それからは、ずっと続けていたサッカーをやめて、フランス語の勉強を始め、スポンジケーキを焼くなどお菓子作りもするようになりました」
高校卒業後、フランスへと渡り、パリ郊外やブルターニュ、アンジェ、ル・マンなどを2年かけて渡り歩き、ホテルのレストランやパティスリーに住み込みでパティシエとしての修業を積んだ。帰国後、マンダリン オリエンタル 東京にて洋菓子の腕を磨く。20代前半で料理人へと転身すると、都内のミシュランの星付きフランス料理店や日本料理店、イタリア料理店など多ジャンルで研鑽を積む。青山の日本料理「てのしま」などを経て、2023年5月に、夫婦で「La mère」をオープンした。
フランス料理に欠かせないハーブの数々は、実家で栽培したものを使用している。もともと教師だった両親の趣味が高じ、現在では多彩な種類を栽培。ミント、セルフィーユ、タイム、ローズマリー、バジル、セージなど、料理のほか、ノンアルコールのペアリングでも欠かせない食材となっている。また、掛川の道の駅で販売している天然のクレソンなどを仕入れることも。「両親に道の駅に買い物に行ってもらい、テレビ電話で並んでいるものを見て、ハーブ類と一緒に送ってもらいます」と黒田シェフ。
食材は、100%無農薬ではないが、ほぼすべて無農薬や減農薬、オーガニックを使用。お肉に関しても放牧や平飼いで、抗生物質等を投与せず、無添加飼料で育った牛や鶏、ジビエなどを扱っている。魚は、主に瀬戸内で獲れたものを使用しており、岡山県倉敷市の魚屋「魚春」の店主が丁寧に処理したものを取り寄せている。「料理人によりおいしい状態で届けるため、生きたまま水槽で一日泳がせてストレスを抜き、神経締めして内臓処理などを終えた状態で届きます」(黒田氏)