日本は42年遅れてる?ジェンダーギャップ指数15年1位の国が「男性育休義務化」を推進する意味
「ルールがなければboys clubのままだった」
ただ取材先では、「アイスランドは決して天国ではない(not paradise)」という言葉を何度も聞いた。平等に向けたラディカルな動きが強まるほどバックラッシュもあるし、変化に消極的な男性たちはこの国でも存在する。最近では平等が当たり前の時代に生まれた右派政党の若い女性議員から「すでに平等は達成しているので、これ以上女性を優遇する必要があるのか」という声が上がることもあるという。 だからこそ、いまだに平等は達成されていないことをデータで可視化することが大切なのだろう。 一次作業におけるジェンダー問題を研究するアイスランド大学のアゥスタ・ディス・オゥラドッティル教授はこう語る(ちなみに国立アイスランド大学は最も優秀な学生が集まる大学だが、7割が女子学生だという)。 「2023年でいえば、政治分野では1位を達成しているアイスランドですが、経済分野は14位です。それは企業の取締役の75%、CEOの8割が男性と、まだ企業幹部が男性中心だからです。それでもクオータ制が導入されて上場企業では徐々に女性の管理職や役員も増えてきました。今、上場企業の役員は36%が女性になりました」 アイスランドの主要産業は漁業だが、男性中心だった業界を変えようと2013年、女性漁業協会が設立された。機械化が進み、加工産業やテクノロジー分野のスタートアップも関わるようになった漁業関連企業で働く女性も増えており、今では約100社で働く345人の女性たちが加入している。 会長であり、アイスランドシーフードインターナショナル社でセールスマネージャーを務めるティンナ・ギルベルツドッティルさんは、こう話した。 「(クオータ制という)ルールがなければ、いまだにこの業界はboys clubのままだったでしょう。いまだにルールに抗う男性もいますが、このルールができたからこそ、女性たちが少しずつ登用されるようにもなってきました」