母のガンに「謎の水で治る」と力説した妹。医師家庭で1人学歴コンプレックスがあった彼女が、なぜトンデモ商売に走ったか
―連載「沼の話を聞いてみた」― マルチ商法に関するトラブルがニュース等で話題に上るたびに、「うちの妹がいかにもやりそうだ」とため息をつくのは、40代の医師・宮下真子さん(仮名)。真子さんの妹も、もう何年もどっぷりマルチ商法の健康食品にハマり、たびたび家族が迷惑を被っているからだ。 妹はなぜそうなったのか? 姉の視点から、ハマった背景に目を向けてみよう。 真子さんの実家は、医者一家である。父、兄、弟、親戚一同、何かしらの医療職に従事している。 「妹は親が納得するような大学に入れる学力がなかったため、親の口利きで海外留学しました。偏差値の低い日本の大学に行くくらいなら、留学のほうがまだ外聞がいいという考えです。 入学は簡単ですが、語学力はそれなりに必要です。妹、英語はすごい得意なんですよ。逆に私は英語が苦手で、そこは尊敬しているのですが」
学歴至上主義の犠牲に
妹は海外の大学を卒業後、いくつかの有名大学の聴講生を経て帰国した。 その後英語を活かした職を求め就職活動をするも、派遣や小さな企業では、親が「そんな会社ではダメ」と納得しないのだという。それで結局、結婚して専業主婦になるまで無職となった。 「妹は、プライドが高い親たちの犠牲になったともいえます。だからですかね、医療を毛嫌いしているようなところがあります」 基本的に、一部のマルチ商法と反医療は親和性が高いので、妹がハマったのも納得がいく。
つい心が動く勧誘トーク
またマルチ商法は、何かしらの事情で就労できない人たちがこんなトークで勧誘されがちだ。 「自分のペースで・空き時間で、稼げる」「資格も学歴もなくても、やる気次第で稼げる」 妹の心が動くのも、仕方ない部分があっただろう。 「妹はとにかくヒーリングや代替医療、民間療法に疑似科学、おまじないとかで“病気が治る!”みたいなのが大好き。要は、標準医療以外の何かです」 過去、母ががんになったときも、謎の水と磁気グッズのようなものを買いそろえてきた。 「あの有名な芸能人も、これでがんが治ったんだって!」そう力説する妹に対し、医師である父や兄は「そんなわけないだろう!」と激怒した。