身近にある「可能性」を抑え込まない…ものごとが「劇的に」上手くいく「たった1つの」行動とは
「できない」のではなく、「やろうとしてない」
先輩からは「ここはいくら頑張ってもダメだ。毎週、顔を見せる程度でいいから」と半ば諦め口調で言われました。確かにそう思えます。私にとっても店主はちょっと苦手なタイプです。訪問しても踏み込んだ話もせず、減った分だけの在庫を補充して帰るといった対応を続けていました。何か提案でもしようものなら、面倒なことになるのではないか。そんな気持ちが心の片隅にありました。 ある日、曽根所長とクルマで移動する際、西田酒店の前を通ります。 「あの店は、誰が担当しているんだ」 曽根所長が私に話しかけてきます。 「はい、私が担当しています」 「ウチの商品を売っているかどうか、外から見ても全然わからないなぁ。担当者ならそこは気づくべきではないのか」 そこで「じつは、あの店は……」と先輩の話やいままでのいきさつを話すと所長が私に諭します。 「確かに人間だから苦手な相手がいても仕方ないが、何もしないというのは順番が違うんじゃないか。店主が難しいから何もできないのではなくて、自分の先入観で何もやれない。これはダメだと思い込んでいるんじゃないのか」
「変えよう」と踏み出した一歩
少しばかり耳の痛い話が飛んできます。そんなこともあって、翌週の訪問時にちょっと勇気を出して「新しい広告を持ってきましたが、いかがでしょうか。せっかくだから店頭でアピールしませんか」と店主に切り出しました。 いつもの難しい顔がこちらを向きます。また何か言われるのかと思っていると、今日は反応が違います。「そうだな。いいよ」と軽い返事。どうやら虫の居所は良さそうです。 ならばと「この陳列ラックもどうでしょう。これを置くと商品も整理できてお客さんも買いやすくなりますよ。いま、キャンペーン中ですがいかがでしょうか」と提案しました。自分でも先週までは考えられない一言です。すると店主が私のすぐ横まで来て話しかけてくれます。 「いままで、そんなことを言ってくるセールスはいなかったが、これで本当に売れるようになるのかね」 「はい、少しかもしれませんがアップすると思います」 営業としては落第点の回答ですが、これをきっかけに店主はあれこれと私に相談してくれるようになりました。まだ経験も浅い新人営業マンです。たいした知識もありません。先方もそれはよくわかっていたと思いますが、私の提案にも耳を傾けてくれるようになったのです。 さらに、店頭に大型自販機の設置、店内には大型クーラーを導入していただき、店の雰囲気は大きく変わりました。売り上げも「信じられないくらい売れないお店」から、「信じられないくらい売れるお店」に変貌しました。しかし、売り上げが伸びた本当の理由は私の営業力ではありません。