日本製鉄のUSスチール買収、日米の合意形成に期待-林官房長官
(ブルームバーグ): 林芳正官房長官は11月の米大統領選を前に民主、共和両党から強い反発の声が出ている日本製鉄によるUSスチール買収計画について、当事者による合意形成への期待感を示した。
林氏は5日、ブルームバーグのインタビューで、「交渉は継続中で結果はまだ分からない」と指摘した上で、「選挙の年であっても、双方がお互いの利益と自由な投資の拡大に同意できることを望んでいる」と英語で語った。
同日午前の官房長官としての定例会見では、バイデン大統領による阻止に向けた動きについて問われたが直接的なコメントを避け、日米相互の投資拡大を含めた経済関係の一層の強化や経済安全保障分野での協力は双方にとって不可欠だと指摘するにとどめていた。インタビューでは政府見解から一歩踏み込んだ形だ。
USスチール買収を巡っては、バイデン大統領の動きのほか、民主党大統領候補のハリス副大統領が同社は引き続き国内で所有・操業されるべきだと発言しているほか、共和党大統領候補のトランプ前大統領も反対を明言している。
一方、USスチールは買収が不成立になった場合は数千人の労働組合員の雇用がリスクにさらされるとしている。
林氏は来週告示される自民党総裁選への立候補を表明している。米側の出方次第だが、USスチール買収問題は総裁選を経て誕生する新政権下で日米関係の火種となる可能性がある。
総裁選に名乗りを上げている候補からも発言が相次いでいる。河野太郎デジタル相は5日開いた政策発表の記者会見で、「恣意(しい)的に政府が介入することは本来あってはならない」と述べた。米政界の反発について「労働組合の票を欲しがっているということだと思うが、そうしたことのために市場がゆがめられないことを望みたい」と語った。
茂木敏充幹事長も政策を発表した同日の会見で、「個別企業の経営に関わる問題へのコメントは控える」としながらも、「経済安全保障分野での協力を進めていくのは、日米両国にとって極めて大切な問題だ」との考えを示した。仮に自らが首相に就任した場合は「日米の共通の価値観を確認しながら、必要があれば、この問題についても議論する」と述べた。
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Yuki Hagiwara, Erica Yokoyama