韓国政府、レッドラインの基準設定に苦心「北朝鮮軍の戦線投入の有無によって決定できない」
韓国の金龍顯(キム・ヨンヒョン)国防部長官がウクライナに対する支援程度を決める基準になる「レッドライン」を巡り、「北朝鮮軍が戦線に投入されるか、されないかによって決めるものではない」と話した。これに先立ち、政府内でロシアの核心軍事技術支援についての関連基準点として議論されたものより曖昧性を高めた。戦略的選択の範囲を広げると同時に、政府の苦心も同時に表に現れたという解釈だ。 ◇「戦況全体の把握を」…ロシアの北朝鮮に対する「見返り」、レッドライン基準の役割かすんできた 金長官は30日(現地時間)、米国ワシントンD.C.近郊のペンタゴン(国防総省庁舎)で開かれた韓米安保協議会議(SCM)後、韓国大使館で記者懇談会を開き、記者から「ウクライナに対する武器支援のレッドラインはどこか」と聞かれて「北朝鮮軍が投入されるか、されないかで決めるものではない」とし「全体的なウクライナの戦況問題に加えて、国際社会との連帯を通じて歩調を合わせていく次元で『段階的』なもの」と明らかにした。 これに先立ち、政府は朝ロ協力水準により防御用武器支援から攻撃用武器支援に至るまで段階別の対応が可能だと公言した。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は21日、北大西洋条約機構(NATO)のマルク・ルッテ事務総長との電話会談で「ロ朝軍事協力の進展に伴う段階別措置を積極的に取っていく」と述べた。 一時政府内では核、大陸間弾道ミサイル(ICBM)部門などで北朝鮮がまだ確保していない技術をロシアが支援する状況をレッドラインとするべきだという基調が力を得たと見られたが、現時点で再び「場合の数」も考慮に入れて見ている可能性がある。北朝鮮軍の戦場投入とロシアの北朝鮮に対する見返りが現実に近づいたことを受けて、より慎重に決める必要があるのではないかとの言葉が軍内外からは出ている。 金長官が北朝鮮ICBM未確保技術に対するロシア技術移転を「特別なものではない」と評価した点もこのような脈絡で注目に値する。金長官は北朝鮮が必要とする軍事科学技術として、ICBM、戦術核、原子力潜水艦、偵察衛星など4種類を挙げて「ICBMの場合、再進入技術はほぼ完成に近いとみている」とし「(完成は)時間の問題で、ロシアが支援をしたからと言って特別なものではない」と話した。軍事偵察衛星も数回打ち上げに失敗したが、成功直前まで来ていると金長官は判断した。「北朝鮮に対するロシアの軍事技術支援が過大評価されている。ロシアが北朝鮮に戦力を支援しても、われわれは十分に克服することができる」という脈絡から出た発言だが、ロシアがICBM技術を支援する場合にもすぐに殺傷武器を支援する決定はくださないかもしれないという点を示唆しているという見方が少なくない。 ◇トランプ氏の当選に備えてレッドライン程度調整の可能性も 一部ではドナルド・トランプ前大統領の米国大統領選挙当選を念頭に置いてレッドラインの程度を意図的に調整している可能性も囁かれている。トランプ氏がバイデン政府のウクライナ支援に否定的な点を考慮すると、トランプ政権発足後には戦争様相が変わる可能性があるという意味だ。韓国の立場では、朝ロ密着にバイデン政府と糾弾の声をともにして圧迫程度を過度に高めれば、一歩間違えれば困難な状況に置かれる可能性がある。 実際、金長官は「トランプ氏が当選すればウクライナ戦争に対する米国の態度が変わることが予想されるが、政府の立場も変化する部分はあるか」という質問に「十分に懸念に値する」と答えた。続いて「仮定を前提として話すことは控えたいが、現在の状況でわれわれができる最善を尽くす」としながら「もしかしたら後で何か問題があればそこに合わせて対応していけばいいと思う」と付け加えた。また「トランプ当選時の準備はできているのか」という質問には「当然(準備は)しておくべき」とし「それを(具体的に)申し上げるのは難しい」と話した。 ◇「モニタリング団派遣、しないのは職務放棄」 ただし、金長官はウクライナに政府モニタリング団を派遣する方案については「当然の任務」という立場だ。金長官はこの日、SCM後に米国のロイド・オースティン国防長官との共同記者会見で「モニタリング団や戦況分析団を派遣しないことはむしろ職務放棄」と話した。該当事案を巡り、野党などの反対世論を正面突破する意志を明確にした。 金長官はまた「派兵は全く考慮していない」としつつも「その他モニタリング団や戦況分析団の派遣などは、軍または政府が今後未来に起こり得る非常状況に備えるためにも絶対に必要だ」と強調した。「ロ・ウ戦争がドローン戦など新しい様相を帯びているところに、ロシアの武器体系が北朝鮮武器体系と連携性があるため、分析と準備が不可欠」というのが金長官の考えだ。