JAXA吉川真さんが語る 日本航空宇宙学会「ジュニア会員制度」とは?
──「はやぶさ2」の拡張ミッションである「はやぶさ2#(はやぶさツーシャープ)」もプラネタリーディフェンスに貢献すると伺っています。 吉川:はい、拡張ミッションもプラネタリーディフェンスの目的を強く出しています。2年後の2026年には幅500mくらいの小惑星「2001 CC21」の脇を毎秒約5kmの相対速度で通過しますが、スピードが速くて小惑星も小さいのでかなり接近しなければデータが取れません。どのくらい接近させるのかは検討中ですが、そのためには非常に正確なナビゲーションが必要です。今回はDARTのように探査機を衝突させるわけではありませんが、「正確に予定した位置を通す」という意味では、まさにプラネタリーディフェンスに求められる技術です。 2031年には拡張ミッションの最終目的地である小惑星「1998 KY26」に到着します。この小惑星は幅30mくらいですが、同じくらいの大きさの小惑星が地球に衝突する確率は100年~200年に1回と推定されています。ツングースカ大爆発と同じレベルの災害が起きるので衝突を防ぎたいのですが、そのもととなる天体の性質を調べられることから非常に期待しています。
──もしもいま宇宙探査ミッションを立案するとしたら、どんなことをやってみたいと思いますか。 吉川:やっぱり小惑星に行きたいですね。NASAの金属でできた小惑星を目指す「Psyche(サイキ)」(※M型小惑星プシケの探査ミッション、2023年10月探査機打ち上げ)や木星トロヤ群の小惑星を目指す「Lucy(ルーシー)」(※木星トロヤ群や小惑星帯の小惑星合計10個を12年かけて探査するミッション、2021年10月探査機打ち上げ)といったミッションが始まっていますが、136万個も見つかっている小惑星のなかには未知のものがまだまだたくさんあります。色が黒くて反射率が低いリュウグウとは逆に反射率が高いものもありますし、まだ探査機が送られたことのない種類の小惑星に行ってみたいと思います。 ──やっぱり小惑星なんですね。 吉川:個人的には最初からずっと小惑星です(笑)。 JAXAでは「はやぶさ2」の前から「はやぶさMk2(はやぶさマークツー)」としてより高度なミッションを検討したことがあり、日欧共同の「マルコポーロ」という名前のミッションとして欧州宇宙機関(ESA)に提案されたことがありましたが、ESAで採択されずに終わってしまったことがあります。また、今はまだ決まってはいないものの、若手の人が次世代のサンプルリターンミッションとしていろいろな可能性を検討しているところです。