JAXA吉川真さんが語る 日本航空宇宙学会「ジュニア会員制度」とは?
■拡張ミッションはプラネタリーディフェンスにも貢献
──想定外といえば、リュウグウがそろばん玉やコマに例えられる形をしていたことには驚かされました。 吉川:最初にリュウグウを見た時はその形にびっくりしました。また、降下リハーサルの時には距離計のレーザーがリュウグウ表面で想定通り反射されずに計測できなかったことがわかりましたが、その理由はリュウグウの色が黒すぎたからでした。それに「はやぶさ」のイトカワには幅50mくらいの平らな場所がありましたが、「はやぶさ2」のリュウグウはイトカワよりも大きな小惑星なのに、岩だらけの表面に平らな場所がどこにもなかったことも想定外で、狭い範囲に降りるピンポイントタッチダウンを最初から行うことになったんです。 ──タッチダウン時の画像を初めて見た時に、まるで砕石をかき集めたような表面をしているんだなと感じたことを憶えています。頑丈な岩の塊ではなく瓦礫がゆるく集まったラブルパイル天体であることを明らかにした近年のミッションは、小惑星のイメージを大きく変えたのではないでしょうか。 吉川:小さな小惑星については特にそうですね。「はやぶさ」によって幅500mのイトカワがラブルパイルであることがわかったことは衝撃的でしたが、リュウグウやベヌー(※ベンヌとも。アメリカ航空宇宙局(NASA)の小惑星探査機「OSIRIS-REx(オシリス・レックス)」がサンプルリターンに成功した小惑星)もそうでしたから、小さな小惑星は瓦礫の寄せ集めのまま残っているのではないかと考えられるようになってきました。
──吉川さんはプラネタリーディフェンス(※惑星防衛とも。深刻な被害をもたらす天体衝突を事前に予測し、将来的には小惑星などの軌道を変えて災害を未然に防ぐための取り組み)にも関わっていらっしゃいますが、その観点からは最近の小惑星探査ミッションについてどうお考えでしょうか。 吉川:NASAの「DART」(※二重小惑星の衛星に探査機を衝突させて軌道を変更するプラネタリーディフェンスの技術実証ミッション、2022年9月に衝突を実施)の結果を見ると、探査機の衝突によってたくさんのイジェクタ(噴出物)が出たことで予想以上に軌道が変化しました。1個の大きな岩よりもラブルパイル構造のほうがイジェクタが出そうですから、その意味ではラブルパイルのほうが軌道を変えやすいかもしれませんね。