JAXA吉川真さんが語る 日本航空宇宙学会「ジュニア会員制度」とは?
──目標の0.1グラムを大きく上回った5.4グラムのサンプル採取と地球帰還を成し遂げ、今も拡張ミッションを続けている「はやぶさ2」は、度重なるトラブルに見舞われた「はやぶさ」と比べてとても順調なミッションだったように感じます。どんな要因があるとお考えでしょうか。 吉川:大きく2つあると思います。1つは過去のトラブルから得られた経験です。先ほども述べた「はやぶさ」のトラブルはもちろんですが、それに加えて同じように様々なトラブルに見舞われた火星探査機「のぞみ」(※1998年打ち上げ、火星周回軌道に投入できず2003年に運用終了)や、メインエンジンが壊れてしまった金星探査機「あかつき」(※2010年5月打ち上げ、同年12月の金星周回軌道投入時にメインエンジンが損傷して周回軌道に投入できず。2015年12月に姿勢制御エンジンを使用して金星周回軌道に投入成功)の経験もすべてハードウェアに反映されました。「はやぶさ2」は見た目こそ「はやぶさ」に似てはいますが、内部的にはずいぶん違っています。 もう1つは「はやぶさ」の経験が活かされた運用です。初めての天体に行くので何が起こるかわからない、事前にいろいろなことを想定していても行ってみなければわからないことがありますから、難しい運用をする「はやぶさ2」では探査機と同じ動作をするコンピューターを使って訓練を重ねました。「はやぶさ」の時はあまり積極的に行いませんでしたが、「はやぶさ2」の訓練の回数は50回以上に上ります。 たとえば、「はやぶさ2」では1回目のタッチダウンの時に設定値の都合で探査機が自分の位置を正確に把握していないことがわかりました。普通なら一旦やめて後日やり直すような場面でしたが、遅れた時間を考慮して降下スピードを速めたことで、ちょうど予定通り降りることができました。こうした対応ができたのも、事前にいろいろなトラブルを想定した訓練を行っていたからです。