小玉良行、小林一毅の二人展が中目黒で開催。目が留まり、心が動くものに目線を向けて描き続けた作品とは。
「この箱は小林さんに向けて収納箱として作ったものを使いました。今回はそれを逆さにして使っていて、蓋の部分がVカットに加工しているので、ピッタリと収まるようになっています」(小玉) 小玉は小林の絵について、「自分の中にすごい入ってくる影響力があって、小林さんの目線になっていってしまうような感覚があります。今回の展示は、お互いに日常で目の留まったものを中心に絵を描いていたんですけど、進捗を共有していくうちに、自分の絵も小林さんの影響が表れていた時期もありました(笑)」と話す。
小林一毅 『言葉が立ち上がるまえに』
ある日、自身の子どもが外で拾ってきた石を見て「なぜ“この石”が良いと思ったのか」と疑問を持ったのをきっかけに描き始めた、小林の『言葉が立ち上がるまえに』。ものの形がもつ潜在的な印象を追求する、約600枚に及ぶシルエット集だ。 「僕らからすると、“良い”石って何かって考えた時に『綺麗で丸い』とか 『宝石みたいにキラキラしている』とか、ものの良し悪しを判断する“言葉”で道筋を作っているんじゃないかって思ったんです。目でみえる可視光の外側にも色には幅があるように、子供には我々が持っているものとはまた別の、原始的な選択の基準があるのではないかと考えました」(小林) なるべく目が「勝手に」拾ってきたものを描き続け、意味を介入させずに形としてものを見るという感覚を追求したという。 「スケッチブックをちぎった紙切れとペンをポケットに用意しておいて、散歩中でもランニング中でも、目に止まったものを『あっ』と思ったらその場で簡単にスケッチしていました。ディティールを追ってしまうと、何が自分の目線を奪ったのかという本質が見えなくなってしまう。なので、子供が石を拾ってくる時の選択のスピード感というようなものを参考にしていました」(小林)
有留颯紀《roof》
今回の二人展の会場展示を担当したプロダクトデザイナーの有留颯紀は、開いた本を被せることで明かりを消せる照明を販売。 「入眠する時に、本に栞を挟んで閉じて、そして部屋の照明を消して寝るという一連の行動を、一つのプロダクトに入れました」(有留) 会場の〈dessin〉は、過去にも小林が個展を開催した古書店。1400枚もの原画に直接触れ、デザイナーが見てきた「目線」をその目で確かめてみてはいかがだろうか。
展覧会 「小玉良行 小林一毅」
〈dessin〉東京都目黒区上目黒2-11-1。入場無料。13時~18時(火曜休)。~2024年11月17日。小玉良行『DAILY RECORD 2023-2024』と、小林一毅『言葉が立ち上がるまえに』を同会場で展示。
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