苦悩を糧に、進化のシーズンへ(後編)(Wリーグ・東京羽田ヴィッキーズ)
苦悩を糧に、進化のシーズンへ(前編)より続く いわゆるFIBAブレイクが明けてWリーグレギュラーシーズンが再開した2月下旬、東京羽田ヴィッキーズはENEOSとの第1戦で残り2分50秒に同点に追いつきながら勝機を逸し、翌日の第2戦もチャンスはあったが10点差で黒星。まだわずかにベスト8の望みはありつつ、自力では届かない状況とあって、萩原美樹子ヘッドコーチも「正直厳しいですね」とこぼした。 そんな中でも、「渡嘉敷(来夢)に対して栗林(美和)が戦えたのが収穫で、昨日も今日もゲームプランはある程度遂行できた」と良い感触はあった。レギュラーシーズンの残り3カード、6試合は大田区総合体育館でのホームゲームであり、かつ順位がベスト8圏外のチームとの対戦。萩原HCは「ホームでしっかり戦って、全勝できるように」と前を向いた。 姫路イーグレッツとの対戦は21点差、29点差で連勝し、第一関門をクリア。続くプレステージ・インターナショナル アランマーレ戦は、第1戦を19点差で取った後、第2戦は第4クォーター開始時の7点リードを守れず、残り1分を切って3点ビハインドを背負ってしまうが、千葉歩の3ポイントで追いつき、オーバータイムの末に1点差で拾う冷や汗の勝利だった。 この試合は、第4クォーター中盤に本橋菜子が負傷退場するアクシデントに見舞われている。その穴を埋めたのは決勝のプットバックを決めた樺島ほたるだったが、その樺島と15得点の千葉以上に萩原HCが評価したのが栗林だった。樺島の決勝点も、ダックインした栗林にボールを入れるセットプレーから生まれたものだ。 チーム史上最長身選手として大きな期待が寄せられたキーマンも、シーズン中盤まではパフォーマンスが安定しなかった。その栗林を「最後まで逃げなくなった。自分が勝負するんだという気持ちを持ってくれて、ボールを預けても大丈夫と思えるようになったのは、今シーズンを通しての成長だと思います」と萩原HCは評した。 そしてもう1点、この試合に関して萩原HCはあるフレーズを勝因に挙げている。 「『ヴィッキーズらしさって何?』というのを選手たちに問いかけてきたんですけど、そこで “Believe 4” という標語が出てきたんですよ。その中の1つに “良い顔をする” というのがあって、今日本当に追い込まれて私もワーってなってるときに、選手たちはベンチで『良い顔をしよう』って言ってて、オーバータイムも良い顔をして出ていったんです。苦しいときにみんなで声をかけ合いながら目を合わせて戦うことができたのは、今日の勝因の1つだと思います」 この日、節目のWリーグ通算1000得点に到達し、「全部このチームで取った点数なので、もういない人も含めて一緒に戦ってきた仲間がつないでくれたんだなと思うと感慨深いです」と振り返った津村も、“Believe 4” について証言してくれた。 「みんなで話し合って、苦しいときにこれをやっていこうという共通理解を決めました。目を合わせる、良い顔をする、声を出す、リバウンドとルーズボール。ちょっと下を向きそうなときに誰かが『Believe 4!』って言って、みんなで思い出して戦うというのはすごくいいなと思います」