【記者解説】異例の裁判「2人の別人格」 裁判のポイントは?
■石田和外アナウンサー: ここからは取材している浜松支局の梅田記者に聞きます。梅田さん、今回の裁判の争点は? ■梅田航平記者: はい、大きな争点となっているのは、①男は犯人なのか、② 犯人だった場合、責任能力はあったのか、の2つです。今回の裁判で特筆すべきは、男が持つとされる「ボウイ」と「りょうくん」という名前の2つの別人格の存在です。 ■石田アナ: 別人格の存在は、事件にどう影響している? ■梅田: 男は、「ボウイ」については、「自分と違う性格」と説明し、「りょうくん」については、「虐待を肩代わりしてくれていた」と話しています。男は初公判で、「人を殺した自覚がないし、記憶もない」と3人の殺害を否認していますが、捜査段階では「ボウイの状態で犯行に及んだ」と供述しています。 弁護側は「事件時に別人格のボウイが現れていたため、主人格の行動を制御できる状態ではなかった」として、男の責任能力を否定しています。 これらの別人格の存在については、「解離性同一性障害」によるものであるとして、弁護側と検察側に争いはありません。 ただ、検察側は、事前にハンマーを用意するなど犯行は計画的で、返り血のついた服を洗い、証拠隠滅を図っていることから、「ボウイの状態で犯行に及んだ」とするのは「不自然不合理で信用できず、責任能力がある」としています。 ■石田アナ: 異例の裁判と言えそうですが、今後の審理はどう進む? ■梅田: 裁判は、14日まで被告人質問が続きますが、「別人格の存在」と「責任能力の有無」をめぐり、審理は複雑化しています。 通常は全ての審理が終わった後に論告・弁論が行われますが、18日には、争点の1つである「男が犯人かどうか」について、検察側、弁護側がそれぞれ中間論告・弁論を行う予定です。 これは審理の長期化が想定される場合などに裁判所が採用するもので、過去には京都アニメーション放火殺人事件の裁判でもこの形が取られました。 中間論告・弁論のあとは「男の責任能力」が主な審理対象となり、判決は2025年1月15日に言い渡されます。