「白亜紀末大絶滅」から生物はどのように復活した? 古生物学者・池尻武仁博士の「生物40億年:北米アラバマからのメッセージ」
古生物学者で、米国アラバマ大学自然史博物館研究員の池尻武仁博士が、「古生物、生物進化、太古の地球環境」の分野の興味深い内容を紹介する「生物40億年:北米アラバマからのメッセージ」。今回は、南極の海生軟体動物の化石研究から明らかになってきた、白亜紀末大絶滅からの生物の復活がテーマです。
大絶滅を探る探偵たち
「約6600万年前の中生代の終焉までに鳥をのぞく全ての恐竜グループが絶滅した」 このような話を耳にしたことがある人はかなり多いだろう。生物の進化史において「白亜紀末大絶滅」と呼ばれているが、実は恐竜だけでなく他の様々な生物グループも同じように姿を消したことは想像に難くないはずだ。 人気のある恐竜の化石を調べることはもちろん魅力的なことだが、それ以外の生物の化石記録を調べることも、白亜紀末大絶滅の謎を解明する上でとても大切なことだ。数々の生物の詳細な絶滅の傾向(パターン)を知ることは、何が大絶滅を引き起こしたのかについて何らかの糸口を与えてくれるかもしれない。 そのために私のような古生物学者そして地質学者たちも、コツコツと事件の捜査に当たる探偵のように、細かな証拠を集めて回る。こうした「探偵仲間」である研究チームが、地道な捜査の成果として、6月18日付けの学術雑誌「Palaeontology」(pala.12434)に、南極で見つかった海生の軟体動物群の化石データにもとづく、白亜紀末大絶滅に関する興味深い研究論文を発表した。 タイトル「Nature and timing of biotic recovery in Antarctic benthic marine ecosystems following the Cretaceous-Palaeogene mass extinction」で検索すると、オリジナルの論文にアクセスできる。日本語に直訳すると「南極の海底に生息していた動物群の白亜紀末時の大絶滅とその後のリカバリー」といったところになるだろうか。 研究チームのリーダーであるローワン・ウィットル(Rawan Whittle)博士は、英国南極観測局(The British Antarctic Survey)に所属する古生物学者だ。他5人の共同研究者を含む国際的な研究チームは、南極・シーモア島のおよそ6600万年前の「中生代の最後期である白亜紀末~新生代最初期である暁新世」にあたる地層から見つかった化石標本をもとに、大絶滅を考察した。