投資判断にSNSは有用? 米英と比較して専門的なアドバイスが希薄=フィデリティの23カ国調査
一般に、金融アドバイスで必要とされるのは、「客観性」だろう。特に資産運用にかかわるサービスについては、投資目的に適った投資が実行されているか、特定の資産に偏った投資をしていないか、リスクに耐えられるだけの備えがあるかなど、資産全体のバランスを第三者によって判断してもらうという側面が強い。1人の考えだけで資産運用を行っていると、当然ながら「自分が一番魅力的に感じる資産」に偏ってウエイトをかけてしまう。それを是正して、予測が外れた結果になったとしても、大きなダメージを受けないようにバランスをとることが重要だ。
ところが、SNSは、おおむね自分の好みに適った情報を集めてくる機能がついている。似たような意見がいくら集まっても、全体のバランスを考慮するようなアドバイスは得られにくいだろう。自分の考えを補強して、より前向きにしてくれるような意見ばかりになりがちなのではないだろうか。多くの国々で、お金のアドバイスにSNSを使っていないのは、このようなSNSの弱点がアドバイスにふさわしくないという判断をしているものと考えられる。
また、日本において、「銀行」や「FA」などといった専門家のアドバイスが一般的に活用されていないのは、これまでのアドバイザリー・サービスの在り方が、「アドバイス」と言いながら、「銀行の利益」「FAの利益」が優先される傾向が強かったということなのだろう。「銀行や証券会社の言う通りに行動したら損をする」ということが、日本国民の間で半ば常識のように思われているところがある。SNS等でも「銀行や証券会社は手数料の高い商品しか勧めない」などということが話題になることが少なくない。
日本の金融機関は、「フィデューシャリー・デューティ(顧客本位の業務運営)」の徹底が求められている。2017年に金融庁が「顧客本位の業務運営に関する原則」を提言し、個々の金融機関が「フィデューシャリー・デューティ宣言」を行って、もっぱら顧客のために、業務を行うことを従業員の義務として規定している。金融庁の提言から7年以上が経過している。事前に手数料率を明示し、顧客のニーズに適った商品・サービスを提供することを徹底しているはずだ。当然、金融機関は顧客と応対するアドバイザーの教育には、非常に力を入れて取りくんできている。