人が辞めていく職場は「ミスをした人」を責めておしまいにする。では、人が辞めない職場はどうしている?
「あなたの職場では、ミスやトラブルが個人のせいにされていませんか?」 そう語るのは、これまでに400以上の企業や自治体等で組織変革の支援をしてきた沢渡あまねさん。その活動のなかで、「人が辞めていく職場」に共通する時代遅れな文化や慣習があると気づきました。 それを指摘したのが、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』。社員、取引先、お客様をうんざりさせる「時代遅れな文化」を指摘し、現場から変えていく具体策を紹介。「まさにうちの会社のことだ!!」「これって、おかしいことだったの!?」と、多数の反響があり話題に。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「個人を責める職場」の問題点について指摘します。 ● 個人攻撃をして終わりの組織 仕事でミスやトラブルが発生した際の対応にも、組織の体質が表れる。原因分析を行い、「なぜ」の問いを繰り返して(なぜなぜ分析)要因を探り、再発防止策を講じる。そこまではよい。その中身が問題である。 原因を、ミスをした本人、すなわち個人に帰結させる組織がある。でもって「本人が気をつける」「ダブルチェックを増やす」など、個人の気合い・根性・注意力に依存した再発防止策しか出てこない。そして「すみませんでした。以後気をつけます」と、本人に謝罪させておしまい。または罰しておしまい。 個人攻撃では、組織の雰囲気はギスギスする。失敗を恐れる体質が醸成され、ダブルチェック、トリプルチェックなど、つまらない仕事が増える。それも職場の空気をどんよりさせる。叱責や面倒な作業を増やされるのを恐れてミスを隠す人もでてくるだろう。 なにより、それでは組織が成長しない。他の人が同じミスを起こさないとも限らないからだ。 ● 気合いや根性でなんとかせず、仕組みを疑おう 健全な組織は、仕組みを疑う。トラブルについて話し合う際、チームメンバーはおのずとホワイトボードの前に立ち、またはマインドマップなどのツールの画面を広げて、以下の観点で意見出しや議論を始める。 ・仕事のやり方や環境に問題または改善余地があるのではないか? ・人手を介さない方法はないか? こうして、仕組みと仕掛けで解決する方法を模索する。 もちろん人の能力や注意力に依存する解決策も講じられるが、それはあくまで一部。ルール、ツール、プロセス、環境などの改善も行う。 また、原因分析と責任追及も分けて考える。人手を介する以上、ミスやエラーは避けられない。それにもかかわらず、ミスやトラブルが発生したときに個人だけを責めるのはいかがなものか。気合い・根性論だけでカバーしようとするのがそもそも間違っている。罪を憎んで、人を憎まず。仕組みを疑い、人を責めない。その考えと行動が徹底している組織もあるのだ。