7-9月期GDPは予想を上回るも、定額減税・給付金の効果は限定的で円安・物価高を背景にした個人消費の基調の弱さは続く
定額減税と給付金は空振りか
注目されるのは、6月に開始された定額減税と給付金の影響が7-9月期に表れたことが見込まれる中でも、個人消費の基調的な弱さが続いているという点だ。1年前に閣議決定された定額減税と給付金は総額5.1兆円と見積もられ、それはGDPを1年間で0.19%押し上げる、と筆者は予想していた。しかし、その経済効果は期待したほどには生じていないのではないか。 個人消費が弱い中、インバウンド需要と輸出によって何とか支えられているのが、今の日本経済だろう。インバウンド需要は2023年の実質GDP成長率を+0.8%押し上げたと推定される。また2024年の成長率を+0.6%押し上げると予想する。インバウンド需要がなければ、2023年の成長率は半分程度にとどまった計算であり、2024年の成長率は0%強になると見込まれる。
定額減税と給付金の効果が期待外れだったことを真摯に受け止める必要
基調的な個人消費の弱さの継続は、政府が11月中に閣議決定を予定している総合経済対策の議論にも影響を与える可能性があるだろう。 定額減税と給付金の個人消費への影響が期待したほどではなかったことを踏まえて、経済対策の中身の是非がより真剣に議論されることを期待したい。根深い個人消費の弱さの底流には、長い目で見て、物価高が続く中、実質所得が余り増加しないことへの消費者の懸念があるだろう。 足もとで実質賃金の上昇率は前年比でプラスに転じつつあるが、2023年に実質賃金は前年比-3.5%と大幅に低下しており、実質賃金の水準はなおかなり低い。さらに、実質賃金上昇の持続性にも不安が残るため、実質賃金の上昇率が前年比でプラスに転じるだけでは、個人消費の本格的な回復にはつながらない。 個人が望んでいるのは、減税や給付金によって一時的に所得環境が改善することではなく、実質賃金が持続的に増加し、また、その増加率が先行き高まっていき、生活水準が切り上がっていくことではないか。それが実現されるには労働生産性上昇率が高まることが必要であり、減税や給付金によって一時的に所得が増えてもそれは実現しない(コラム「経済対策の真水は13.5兆円規模か:住民税非課税世帯への給付とエネルギー補助金のGDP押し上げ効果は0.07%程度と推定」、2024年11月15日)。