組込型金融で銀行が儲けるには? 「みんな」「GMOあおぞらネット」の場合
今後の成長に欠かせない「ハイパーパーソナライズ提案」
BaaSによる組込型金融サービスを展開する上では、金融機関は新しい貸付サービスを提供して資金収益を得ることが望ましい。小俣氏は「特にハイパーパーソナライズされた提案が重要です」と説明する。 その一例が、チェックアウト時にBNPLやローンを提案することだ。歯科治療やリフォームで高額な費用が発生した際に、BNPLやローンの選択肢をその場で提示することで、顧客に柔軟な支払い手段を提供可能にする。小俣氏は、POSファイナンス分野における先進的な事例として、シティ銀行やUSバンク、バンク・オブ・アメリカ(Bank of America Corporation)などを挙げる。各行の事例集が無料公開されている。 さらに、インボイスファイナンス分野では、ロイズやBNPパリバが「HOKODO」という会社への資金的裏付けを通じて企業間取引のBNPLサービスを提供している。また、オーストラリアではウエストパック銀行(Westpac)やナショナルオーストラリア銀行(NAB)、オランダのAdyenなどが同分野での活動を進めている。 小俣氏は「特にAdyenはフィンテックからBaaS基盤を発展させ、英国で銀行免許を取得しています。日本ではクレジットカードのみだが、世界中でデビットカード(含、法人カード)やリボ、分割払い、BNPL、ローン提供など多様な支払いオプションを提供する体制を整えています」と説明する。 「グローバルにはPayPal Checkoutに対抗して、米国のZelle(Early Warnings)が銀行共通デジタル・ウォレットを提供しPaze Online Checkoutを始めたり、欧州もInstant Credit Transferが銀行共通デジタル・ウォレットWero(EPI)を開始したりしています。さらに、BIS(国際決済銀行)のProject NEXUSにより各国のインスタント・ペイメントがつながり始め、特に東南アジア各国と欧州(Eurosystem)ではQRコード決済やP2P送金がネットで可能になってきています。一方、PayPayは11月6日の報道では、Alipay+とのデジタル・ウォレット決済を拡大しており、Alipay+参加の各国デジタル・ウォレットの国内利用だけでなくAlipay+が利用できる各国での日本人によるPayPay利用が可能になりました」(小俣氏) こうした事の先には、チェックアウト時のオプションに日本の地域金融機関も対応していけるのかが問われることになると言う。たとえば、Citi Flex PayやMonzo Flexといった伝統的金融機関やチャレンジャーバンクのチェックアウト時での金融サービス提供やUSバンクやRevolutがPOS端末へも手を染めている状況は、日本の地域金融機関にとっても参考となるだろう。 すでに日本でも三井住友銀行はstera packを、北國銀行はエスキュービズムと組んでPOS端末展開を始めている。従来のハードウェアでのPOSだけでなく、Tap-to-Pay機能を利用した非接触によるSoftPOSの展開も始まっている。USバンクのmobile POSや豪コモンウェルス銀行のSmart EFTPOS端末もPOSファイナンスやインボイスファイナンスへの入口となっている。 小俣氏は「新しい預金だけでなく、新しい為替の仕組みを理解し、ネット経済における新しい貸付やチェックアウト・オプションも提供できるデジタルバンクになれなければ、4割を占め始めたネット経済で金融サービスを提供できない金融機関となってしまうだろう」との見解を示した。
構成:編集部 山田 竜司、解説:小俣 修一