組込型金融で銀行が儲けるには? 「みんな」「GMOあおぞらネット」の場合
みんなの銀行やGMOあおぞらネット銀行などが直面する課題
ただ、小俣氏はみんなの銀行もある課題に直面していると指摘する。それは3年間の開設口座数が100万口座超であり、トランザクションボリュームだけによる黒字化が非常に難しい点だ。 「経験則ではそうしたモデルには1000万口座以上が必要とされますが、コロナ禍以降、金融市場は金利がある世界へ移行し、チャレンジャーバンクが資金収益に基づくビジネスモデルをも追求する重要性が増しています」(小俣氏)。 その上で、伝統的な金融機関のデジタルバンク化と当初ペイメント(支払・送金)が中心だったチャレンジャーバンクの中間となる「レンディング2.5」と呼べるモデルも登場しているという。同モデルでは、500万口座ぐらいからでも収益黒字化でき、チャレンジャーバンクでもビジネスが成り立つという。 英国の起業家・中小企業向けの銀行「OakNorth」や、英国のRBS(The Royal Bank of Scotland)が提供する金融サービス『Mettle』などが、同モデルに近いイメージとのことだ。個人と中小企業取引のデジタル化、BNPLと即日融資などの形態を取る。日本では池田泉州ホールディングスがデジタルバンクである『01Bank』の事業開始を進めており、小俣氏は「住信SBIネット銀行やGMOあおぞらネット銀行、みんなの銀行と競合する構図が予想されます」と明かす。 また同氏は、GMOあおぞらネット銀行が中小企業を中心にサービス契約数が500件を超えたことを公表しているが、みんなの銀行は当初モデルに加え金利のある世界でのローン拡大を目指していると指摘する。ただ、1,000万口座を目指すには大規模なマーケティング費用かBaaSによる組込型金融サービスの大口先獲得が必要で、PayPayのような規模に到達することは容易ではないと説明する。 「フィンテック企業由来のBaaSとの競争も考慮すると、チャレンジャーバンクはRevolutやチェースUKと同水準の取り組みが求められるかもしれません。ただ、収益性確保を考えると、先ずは中小企業取引中心のビジネスを目指すGMOあおぞらネット銀行や01Bankのようなシナリオも重要です」(同氏)