組込型金融で銀行が儲けるには? 「みんな」「GMOあおぞらネット」の場合
組込型金融の形態から読み解く「提供サービスの差別化要素」
これまで小俣氏は、組込型金融サービスの実現に必要不可欠な「新しい預金・新しい貸付・新しい為替」という3つの仕組みを紹介してきた。オープンバンキングよりも広範囲となるオープンファイナンスとは一体どのようなものなのだろうか。 その前提として小俣氏は、伝統的な金融機関デジタルバンク化でのBaaS、チャレンジャーバンクのBaaSの2種類は大きく意味合いが異なることを理解すべきと説く。 たとえば、住信SBIネット銀行や北國銀行、紀陽銀行といった従来の伝統的な金融機関は、ホストコンピュータを基盤とした従来型の延長としてBaaSを提供する。 小俣氏によると、これまでは主にホストコンピュータと外部の端末やネットワークとの間でデータ通信を中継・制御する役割を担うフロントエンドプロセッサー(FEP)をオープンシステム化やクラウドで利用できる手法を用いているという。そのため、ファーム・ホームバンキングの延長線上のようなイメージが持たれることが多い。 また、住宅ローンや事業者向け融資といった紙ベースの業務を、オンラインで置き換える「レンディング2.0」に近いイメージでサービスを提供している。 一方、みんなの銀行やRevolutなどのチャレンジャーバンクは、スマホで完結する世界を描いている。POSファイナンスやインボイスファイナンスなどは、いわゆる「レンディング3.0」と呼ばれる。 リアルタイムに近い与信サービスを重視し、従来の銀行業務とは異なる、より迅速でユーザーに即したサービスを提供することが特徴だ。同様、JPモルガンがロンドンに設立した個人向けデジタル銀行事業「チェースUK」は、従来の銀行とは異なる新しい形態のバンキングサービスを提供することを目指している。 「チェースUKやRevolutが目指しているモデルは、実は2008年ごろから始まっている金利のない世界で作られてきました。主にZ世代やミレニアル層を見据えたファッショナブルなスマホ・アプリから始まったみんなの銀行のようなモデルでは、金利(資金)収益より役務収益に軸足を置いて開業しているため、取引量や口座数といった顧客数やトランザクションボリュームが重要です」(小俣氏)