第2次トランプ政権で高まる中東リスク 日本企業に求められる安全対策とは
企業が取るべき対策は
現時点で中東から撤退する必要性はないものの、企業としては以下のようなリスク回避策を検討しておくことが重要です。まず、駐在員の安全確保のため、紛争やテロのリスクに備え、駐在員の数をビジネスに影響が出ない範囲で極力最低限に努め、緊急時には即応できる体制を構築しておくことです。 今年4月と10月にイランがイスラエルに向けて大量のミサイルやドローンを発射した際、イスラエルに在住する外国人は自宅や周辺にあるシェルターに避難し、企業の間では駐在員の安否を確認する、同国からの退避を進める動きが見られました。そして、紛争当事国ではないヨルダンでは、イスラエルの防空システム、アイアンドームによって撃墜されたイランのミサイルやドローンの破片が首都アンマンなど各地に落下する事態が生じ、ヨルダンに滞在する駐在員に対しては自宅待機が本社から命じられました。アンマンなどはイスラエルと距離がそれほど離れていません。 さらに、イスラエルとイランの間で緊張が高まった際、カタール航空やエミレーツ航空など日本と中東を結び航空会社は、ドーハやドバイからイラン、イスラエル、ヨルダンなどを結ぶフライトを毎回のように停止にしています。今後も同様のリスクがあることから、駐在員の最少化、緊急時における即応体制の構築は平時からやっておくべきでしょう。 また、そのために政情や市場動向を把握し、迅速に対応できるよう情報収集を日頃から徹底しておくことが重要です。基本的には日本外務省の海外安全情報をチェックするでしょうが、それは常に最新情報を網羅しているわけではありません。SNSで英語やアラビア語で「イラン、イスラエル、アラート」などと検索することで最新の情報が瞬時にアップされていることも多く、情報源の多様化が極めて重要です。 ◇ ◇ 第2次トランプ政権下の中東情勢は不透明さを増していますが、日本企業が直面するリスクは決して軽視できません。軍事的衝突や地域不安定化の可能性を踏まえ、企業ごとに実情に即したリスク管理を進めることが求められます。冷静な状況分析と柔軟な対応が、これからの中東ビジネス成功の鍵となるでしょう。 ◆和田大樹(わだ・だいじゅ)外交・安全保障研究者 株式会社 Strategic Intelligence 代表取締役 CEO、一般社団法人日本カウンターインテリジェンス協会理事、清和大学講師などを兼務。研究分野としては、国際政治学、安全保障論、国際テロリズム論、経済安全保障など。大学研究者である一方、実務家として海外に進出する企業向けに地政学・経済安全保障リスクのコンサルティング業務(情報提供、助言、セミナーなど)を行っている。
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