【特集】原爆を「落とした」祖父と「落とされた」祖父 被爆80年へ孫たちが訴える平和
原爆投下から2025年で80年になります。戦争を体験した人が減っていく中、原爆を落とした側と落とされた側の孫同士が協力し、次の世代に記憶を受け継ごうとしています。
2024年9月。長崎市に住む原田小鈴(はらだ・こすず)さんは、友人であるアメリカ人のアリ・ビーザーさんと会う約束をしていました。映像作家のアリさんは、毎年のように日本を訪れています。この日、1年ぶりに原田さんと再会しました。
2人を引きあわせたのは、79年前のあの出来事です。原田さんの祖父・山口彊(つとむ)さんは、29歳のときに出張先の広島で被爆し、その3日後、逃げ帰った長崎で再び被爆した『二重被爆者』です。彊さんが亡くなった後、家族のもとに「被爆体験を聞きたい」と訪ねてきたのが、アリさんでした。それから10年以上、交流が続いています。
アリさんは、原田さんに見せたいものがありました。 ■アリ・ビーザーさん 「ドキュメンタリー作品をお見せします。」 彊さんの『二重被爆』をテーマにしたドキュメンタリー作品です。
2023年3月に広島と長崎で撮影し、原田さんの証言をもとに、彊さんが被爆した場所をめぐりました。 ■原田小鈴さん 「左側を向いて被爆するので、こっち半分を全部やけどしました。」
原爆投下から80年となる2025年の公開を目指して、制作が続いています。 ■原田小鈴さん 「すごいですよね。アリが映像化して。いろいろな葛藤があって日本に来ていると思うし、私もいろいろな葛藤がありつつ、活動を続けながらアリと出会ったんですけど。」
アリさんが繰り返し被爆地を訪れる理由。祖父のジェイコブ・ビーザーさんは、広島に原爆を落とした「エノラ・ゲイ」と、長崎に原爆を落とした「ボックス・カー」の両方に乗っていた唯一の人物です。
アメリカの学校で、祖父は「戦争を終わらせた英雄だ」と教えられました。しかし、被爆地を訪れ、考えが変わりました。今は、搭乗員の孫という立場から核兵器の恐ろしさを伝えようと活動しています。 ■アリ・ビーザーさん 「僕は、被爆者の体験をアメリカの人々に伝えたかったから日本に来ました。アメリカでは、教科書にたった1ページ書いてあるだけで、あまりにも簡単でした。」