田中碧はなぜ「ここぞ、という場面で点を取れるのか?」中村憲剛が感じた“あがき続ける才能”「三笘の1ミリ」からの得点に「やっぱりな、と」
「ここぞ」という場面で点を取る男
それにプラスして、田中は「ここぞ」という試合や場面で点を取る男でした。 Jリーグ初ゴールは、初出場した北海道コンサドーレ札幌戦でした。84分に途中出場して、アディショナルタイムにネットを揺らしました。僕はこの試合に先発出場していたのですが、試合前から田中が「点が取りたい。取れる気がする」と話していたことを覚えています。 日本代表での初ゴールは、2021年10月のワールドカップ・カタール大会アジア最終予選のオーストラリア代表戦でした。チームはここまで1勝2敗と負け越していて、このホームゲームは絶対に落とせない試合でした。ここで、日本代表の森保一監督はシステムを4―2―3―1から4―3―3へ変更し、田中がスタメンに抜擢されました。 彼は直前の東京五輪に出場していましたが、フル代表としてプレーするのは19年12月以来でした。国際Aマッチ出場は3試合目で、最終予選初出場です。しかも試合の重要度はきわめて高い。緊張感に包まれてもおかしくないこの状況で、彼は先制ゴールをマークしたのです。
「自分がここで点を取る」というイメージ
ワールドカップ・カタール大会でも、グループステージのスペイン代表戦でゴールネットを揺らしています。「三笘の1ミリ」から田中が身体ごと押し込んだ得点は、スペイン代表撃破とグループステージ首位通過につながる歴史的な一撃となりました。 カタールで歓喜を爆発させる彼を見ながら、「ああ、やっぱりな」と思いました。彼は「点が取りたい」「自分が取ります」と明言して、実際に取ってきた選手だからです。 スペイン戦後の取材エリアで、記者から「気持ちで押し込んだゴール?」と聞かれると、田中はこう答えました。 「気持ちじゃないですね。あそこへ入っていくのは、ずっとやってきたので。自分がここで点を取ると信じて、ずっとイメージしてやってきたので」 24年3月のワールドカップ北中米大会アジア2次予選、朝鮮民主主義人民共和国代表戦でも開始早々に先制点をあげています。結果的にこのゴールは、1対0の勝利に結びつきました。 得点能力がセールスポイントではないけれど、大切な試合で取る。チームを救うゴールを決める。これはもう、「そういう星のもとに生まれてきた」としか言いようがない気がします。 重要度の高い試合で結果を残す選手には、「勝負強い」という表現が使われます。それもひとつの「才能」と言うことができますが、田中碧については「自分が取るんだ」という「志向」がゴールを引き寄せているとしか思えません。 <第1回、2回も公開中>
(「Number Ex」中村憲剛 = 文)
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