あるトレーニング導入後にリーグ戦優勝、大学日本一と次々に結果を出した慶大野球部。実はその姿を間近で見ていたのが「弟分」の…
◆迎えた春季リーグ戦 そして迎えた、2021年の東京六大学野球春季リーグ戦。初戦の法政大学戦で、慶大ナインの「変化」が早くも表れます。 優勝候補筆頭の法政大学に2点をリードされる苦しい展開。しかも、6回までノーヒットで一人の走者も出せず、完璧に抑え込まれていました。 点差以上に相手との力の差を見せつけられ、意気消沈してもおかしくない状況です。 それでも、慶大の選手は相手ピッチャーに少しでもプレッシャーを与えようと必死でボールに食らいつきました。 ベンチの選手たちも「いいぞ!」「まだまだこれからだ!」と前向きな言葉を送り続けます。 すると、好投を続けていた相手ピッチャーに異変が起きます。 ヒットこそ許さないものの、コントロールに乱れが生じ、試合の終盤に6つの四球を出してしまったのです。 結局、その試合は1対2で慶大が敗れました。
◆次々と結果を出していく慶大 しかし、試合終了後、メディアが「プロ注目の右腕、三浦投手が慶大相手に “ノーヒットワンラン”」と法政のエースの偉業を報じる中、その彼は勝利者インタビューで次のコメントを残していました。 「慶應のバッターの気迫に押され、逃げ腰になってしまいました」 こうして初戦は落としたものの、勢いに乗った慶大はその春季リーグ戦で優勝。 そして、全日本大学野球選手権大会で34年ぶりとなる4度目の大学日本一に輝いたのです。 また、同年の秋季リーグ戦でも優勝し、30年ぶりの春秋連覇を達成。 さらに、2023年の東京六大学野球秋季リーグ戦でも4期ぶり40回目の優勝を果たすとともに、明治神宮野球大会で4年ぶり5度目の大学日本一の栄冠を手にしたのです。
◆甲子園107年ぶりの優勝の背景 2021年2月にメンタルトレーニングを導入し、すぐにリーグ戦優勝、そして大学日本一と次々に結果を出した慶大。 その姿を「弟分」の塾高も間近に見ていました。 そのこともあって、塾高野球部の森林貴彦監督からも声をかけていただき、私は同校野球部の人財育成・メンタルコーチも兼任することになったのです。 2022年夏大会後に結成された塾高新チームのキャプテン・大村選手をはじめ、塾高の選手たちは皆、「日本一になるために必要なことはどんなことでも実践してみよう」と、メンタル面の強化に意欲的に取り組みました。 甲子園での107年ぶりの優勝の背景には、このようなチームづくりがあったのです。 ※本稿は、『強いチームはなぜ「明るい」のか』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。
吉岡眞司
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