「他人の人生を狂わせてしまって後悔しない日はない」――入江慎也が語った騒動と相方・矢部への思い
きっと自分は調子に乗っていた
憧れた芸人の世界。どうにかしてこの華やかな世界にしがみつこうと必死だった。できる仕事はなんでもこなした。その結果、事務所を飛ばして闇営業の仲介をしたことが、先の騒動につながるのだが、会社にも先輩にも迷惑をかけたとこうべを垂れる。 「あの件に関しては本当に相手がどんな人間かよく分からずに、知り合いの人から紹介されて出会ってしまった結果でした。でも、自分が調子に乗っていたのは間違いありません。『最近ふわふわしてるぞ』と何度も注意されましたし、先輩たちはそうやって調子に乗って転げ落ちていった人をたくさん見てきたんでしょう。でも当時の僕は、せっかくのアドバイスも聞く耳を持たなかった」 その結果、先輩のためによかれと思ってやってきたことが、悲劇を招いた。誰かの人生を変えてしまうことの恐ろしさを知った。 「世間をなめていたんです。あのときのことは悔やんでも悔やみ切れないです。思い出すたび消えてしまいたい。迷惑をかけた人たちに何ができるのか、いまだに答えは出ません」
ここまでできたのは人に恵まれたから
仕事も信頼もすべてを失った入江は、なぜ清掃業を選んだのか。 「騒動の真っただ中は家の外に出られない状況が続きました。精神的にも追い込まれていたんですが、ある日、部屋の掃除をしたんです」 芸人時代にネタで使っていたフリップや小道具、過去の写真などを思い切って捨てた。驚くほどすっきりした。掃除は新しい人生を進む自分に向いているのかもしれないと思った。 インターネットで「目黒区 清掃」と検索して、近所の清掃会社に電話をした。アルバイトしたい旨を伝え面接に足を運ぶと、清掃会社の社長はびっくりしていた。 「騒動のことはひとつも聞かれませんでした。本気でやる気はありますか?と何度も聞かれました」
時給1100円、42歳の再スタート。年下の社員たちの下で、アシスタントをしながら仕事を覚えた。顔をマスクで隠して現場に向かった。 「今でもエアコンは難しいですね。高いところにあるので背の低い自分には不利ですし、機械だから壊れることもある。お風呂やキッチンの汚れが落ちるのは楽しいですよ」 きついこともあったが仕事を続けられた。それは人に恵まれたからだと振り返る。