「他人の人生を狂わせてしまって後悔しない日はない」――入江慎也が語った騒動と相方・矢部への思い
後悔しない日はない
2年前、テレビは朝から晩まで芸人の闇営業問題一色だった。渦中にいた男たちの人生は大きく変わった。そして、その当事者であった入江は世間から責任を問われ、事務所からは契約を解除された。
「自分のことよりも、他人の人生を狂わせてしまった。今でも後悔しない日はないです」 幼い頃から憧れていた芸人という仕事を追われ、その上、想像をはるかに超える大バッシング。自身が売りにしていた「合コンキャラ」「後輩キャラ」への反発がとめどなくあふれ出すのを感じた。世間が自分を芸人として認めていなかったことにも改めて気がついた。 芸人になることを夢見ていた入江は、高校の同級生だった矢部を誘ってお笑いの道へ進んだ。学生時代からリーダーシップを握っていたのは入江だった。 しかし、プロになってから入江は相方の真の才能に気づく。 「コンビの主役は自分だと思ってたけど、ぜんぜん違ったんです。どこに行ったって、相方のことを聞かれる。矢部くんって面白いよねって」
相方は仕事がどんどん決まっていく。葛藤した入江はどうにか先輩に可愛がってもらうために、プライベートを犠牲にした。無償で引っ越しの手伝いに行き、合コンを頻繁にセッティングし、食事に誘われたらいつでも家を飛び出せるよう、都心に家を借り……。先輩が喜ぶことならなんでもした。まさに太鼓持ちだ。 先輩たちがテレビに出始めると自然と入江もテレビに呼ばれるようになった。そこで先輩たちのエピソードを話すとうけた。 「この辺りからチャラいキャラクターで認知されるようになったんです。自分の武器はこれだと思いました」
「一生追いつけない」感じた限界
その「チャラい」キャラクターが作り手たちにハマり、どんどん露出を増やしていく入江。その一方でマイペースな相方に対する鬱憤も溜まっていった。 「もっと世界を広げろよってアドバイスをしたこともありました。自分は他人とつながって仕事が増えたから、お前ももっと外に世界を広げたほうがいいよって。今思うと本当に恥ずかしいです」 だからこそ、自分の仕事が減るのと前後して、矢部が漫画(『大家さんと僕』)で売れたときは正直悔しかったという。相方を輝かせるのは自分だと思っていたからだ。 相方が露出を増やすなか、入江に生まれたのは焦りだった。もっと売れたい。負けたくない。 でも、自分には自信がない。周囲には売れっ子と呼ばれる才能豊かな先輩ばかりで、常に圧倒されていたからだ。 「一生追いつけないと思ってました。売れてる後輩に対するコンプレックスもありましたね。とにかく焦っていたんです」 芸能界から消えたくない。その結果キャラが消費されていく悪循環。その頃になると「友だち5000人」が彼の代名詞になっていた。 人に会うことが仕事になってしまうと、たとえ興味がない相手でも会わないわけにはいかない。断ったら仕事がなくなる。 「僕は大喜利で笑いを取ったことはありません。テレビでも先輩の話をするしかない」 勢いのある後輩に「そんなことするために芸人になったんですか」と辛辣な言葉を投げかけられたときはショックだったという。